Interview
サモ・ハン アクション健在、満足 映画「おじいちゃんはデブゴン」主演・監督
毎日新聞 2017年4月17日 東京夕刊

(写真)
=根岸基弘撮影
https://mainichi.jp/articles/20170417/dde/012/200/002000c

 ジャッキー・チェンらと並び、香港映画界の重鎮として知られるサモ・ハン(1998年、サモ・ハン・キンポーから改名)。
「おじいちゃんはデブゴン」(5月27日公開)で20年ぶりに監督を務め、アクション監督、主役も演じている。

 キャンペーンのため来日したが、身長約170センチ、体重は100キロ超えと、何とも迫力がある。撮影のためアクションポーズを取ってもらうと、
穏やかだった表情が一気に険しくなった。「日本は素晴らしい。人はいいし、料理もおいしい」。撮影が終わると、柔和な表情に戻った。

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 拳法の達人である退役軍人ディン(サモ・ハン)は故郷の村で、ひとりで暮らす。認知症を患っているが、
唯一心を許していたのが隣に住む少女チュンファ(ジャクリーン・チャン)。借金漬けのチュンファの父が姿を消したため、
チュンファは誘拐されそうになる。ディンは老人とは思えぬカンフーでチュンファを守ろうとするが……。

 久しぶりの監督。なぜ?

 「97年に撮り終わった後、香港映画界に失望したのが原因。プロ意識のない連中が多くなり、一緒にやるのが苦痛になった。
今回、脚本の人物描写、設定、ストーリーとすべてがよかったので引き受けた。アクション監督はずっとやっていたので、
特に感慨はなかった。全体を見るか、部分を見るかの違いだけだった」

 さすがに昔のような切れはないが、アクションは健在である。

 「スタントマンを使ってはいるが、戦うアクションは全部自分でやった。非常に満足している」

 どこを見てほしい?

 「監督もやっているので、ここだけ見てくれというのは難しい。ストーリーの流れを全部見て、アクション、人間ドラマを楽しんでほしい」

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 9歳で芸能界に飛び込んでから約55年がたつ。

 「簡単に言えば、“得難い”ということ。今この場にいられること、仕事をさせてもらえるのも、得難いし、貴重。そういう芸能人生だった」

 現在65歳。11年前の来日時に「70歳まで現役」と話していた。

 「あと5年頑張って走り、まだやれると思ったら、さらに延長する。一番大事なのは健康。健康であれば、70歳以降もできる」

 さまざまな出会いのおかげで、今があると振り返る。

 「特に人との出会いで啓発を受け、節目になった。まず、ブルース・リー。こうやるんだ、と自分の中に目覚めるものがあった。
そして、ツイ・ハークとウォン・カーウァイ。共に天才で、大きな影響を受けた」

 CG(コンピューターグラフィックス)全盛の最近のアクション映画に一家言持つ。

 「CGを悪いと思わない。ただ、人が動くアクションはCGでは難しい。リアル感がない。やはり、人の動きに関して、人間にやってほしい。
CGはそれに対して、バックグラウンドで使うものだと思う」。ひときわ声が大きくなった。

 座右の銘は?

 「『尊師重道』。先輩、師匠を尊敬し、人として道を重んずるという意味。子供の頃から、これを肝に銘じて生きてきた」【金沢盛栄】