「ミスター円」として知られる榊原英資元財務官は28日、円が対ドルで1ドル=150円を超えれば、日本政府は再び為替市場に介入する可能性があるとの見解を示した。155円まで円安が進むと当局は懸念を強めるとみている。

  1997-99年の財務官在任中に複数回にわたって為替介入を指揮した榊原氏は、「誰がどう言おうとも、為替水準は非常に重要だ。150円を超えていくと何らかの介入につながる可能性がある」と、ブルームバーグテレビジョンのインタビューに英語で答えた。「その時の状況にもよるが、155円程度が政府当局者が懸念し始めるであろう水準だ」という。

  日本は米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針が変更されるのを待つ中で、為替介入を行わずに円安局面を乗り切るというのが榊原氏の中心的な見方だ。

  為替市場では、米政策金利が従来想定よりも高く長期間維持されるとの見通しを背景にドル高が進む一方、円は引き続き弱含んでいる。ただ財務省当局者が、円安が急速に進めばあらゆる手段を排除せず適切な対応を取ると繰り返し警告を発する中、市場は円の下値を試すことに慎重になっている。

  日本は昨年、円相場が146円や152円に接近した際に計3回、総額9兆円(約600億ドル)余りの介入を実施した。

  現在、インド経済研究所(IIES)理事長を務める榊原氏は、当局が再び為替介入をせざるを得なくなった場合、同規模またはそれ以上の資金を投入する必要があるかもしれないと指摘。ひとたび介入をすれば、口先介入がより効果的なものになるとの見方を示した。一方、介入がなければ円は160円に接近する可能性があるものの、その水準を超えることはないとみている。

  榊原氏によると、米連邦公開市場委員会(FOMC)の12月会合後に流れが変わり、来年にも日本銀行が政策金利を引き上げる可能性がある。

  「米国の金融政策が近い将来変わる可能性は非常に高い」と指摘。「もしそうなれば、円は130円に向けて上昇し始めるだろう」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-28/S1OPZ3T0AFB401