NTTドコモは異なるメーカーの機器を組み合わせて携帯電話の通信網を構築する「オープンRAN(ラン)」の輸出販売を本格化する。経済安全保障の高まりを背景に、通信網から華為技術(ファーウェイ)など中国勢を排除する動きは世界の通信事業者で活発だ。脱中国の動きを商機ととらえ、2025年度に100億円の売上高を目指す。

これまで携帯向け無線通信は、ネットワーク全体を1社の機器でそろえるのが一般的だった。オープンランは専用機器をクラウド上のソフトウエアに置き換える「仮想化」と呼ばれる技術で通信網を構築。顧客の要望に応じて複数メーカーの機器を組み合わせて提供する。ドコモの場合、富士通やNEC、米インテルなど13社の機器を組み合わせて相互接続する。

ドコモは米ラスベガスで開催中のモバイル関連見本市「MWC」でオープンランのサービス概要を発表した。オープンランの通信網の構築から運用支援、保守までまとめて海外の通信会社に提供する。機器は各国の周波数に対応できるよう、無線装置についても7社が提供できる体制を新たに整えた。

9月下旬には自社の通信網にオープンランを導入し運用を始めたことも明らかにした。ドコモの標準的なネットワークと比べて、初期費用や維持管理を含めた全体のコストは最大3割削減でき、基地局の消費電力は最大5割減らせるという。

オープンランを活用すれば、経済安全保障上の懸念があるファーウェイなど中国企業の機器を使わずに通信網を構築できる。英政府は2億5000万ポンド(約450億円)を投じ、30年までに通信網の35%をオープンランにする目標を掲げている。英調査会社オムディアによると、22年の基地局シェアはファーウェイが31%と世界首位で、スウェーデンのエリクソン(26%)、フィンランドのノキア(18%)の3社で75%になる。

ドコモのオープンラン事業責任者の安部田貞行氏は「国によっては明確にファーウェイを避ける動きもある。置き換え需要はあり商機になる」と話す。ドコモはすでに韓国、フィリピン、英、米、シンガポールでの導入を目指す方針を明らかにしている。潜在的な顧客を含めれば交渉を進める海外通信会社は数十社にのぼるという。オープンラン導入によりコスト削減が見込めるため、高速通信規格「5G」の展開加速につながるとの期待も高い。
2023年9月27日 9:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC262A20W3A920C2000000/