中小企業の倒産が、コロナ下を上回るペースで増えている。新型コロナの感染症法上の分類が「5類」に移行した後も、業界によっては期待されたほど業績が戻っていないためだ。手厚い公的支援は打ち切られ、物価高が追い打ちをかける。中小企業向けの実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済も本格化しており、今後さらに増える可能性がある。

東京商工リサーチによると、5類に移行した5月の中小企業の倒産件数は704件(前年同月比34・3%増)、6月は770件(同41・2%増)。ゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎えた7月は758件(同53・7%増)だった。

 7月に倒産件数が最も多かった業種は、「サービス業他」で262件(同69・0%増)。全体の34・5%を占めた。そのうち飲食業が71件(同73・1%増)と増加が目立った。次いで、建設業が148件(前年同期比54・1%増)だった。

 5類移行後、インバウンド需要の盛り上がりなどを受け、サービス業のうち宿泊業などは回復傾向にあるが、恩恵が行き届かない飲食業は厳しい状況が続く。

 コロナ禍で経営を下支えしてきた時短協力金などの支援策がなくなり、電気、ガス料金の値上げや物価高などの負担も重しになっている。建設業や製造業も、資材価格高騰のあおりを受け、回復が遅れているという。

 ゼロゼロ融資も返済が本格化し始めており、東京商工リサーチの担当者は「過剰債務に陥り、事業継続を断念する傾向が強い」と話す。

 ゼロゼロ融資は、利子を3年間、国や都道府県が負担し、返済が滞った場合は、公的機関である各地の信用保証協会が肩代わりする手厚い仕組み。協会が元本を回収できなかった分は、実質的には国民の負担になる。

 コロナ禍で苦しむ中小企業の資金繰りを支え、倒産を防ぐ効果があった一方、もともと稼ぐ力のない企業の「延命」につながった可能性も指摘されていた。コロナ関連の公的支援が薄くなっていくのに伴い、企業の実力そのものが試される局面に入る。
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