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『ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト』(三五館シンシャ発行)が話題を呼んでいる。経済アナリストで獨協大学教授の森永卓郎氏新刊だ。

ザイム真理教とは、緊縮財政のゴリ押しのことだ。「日本の財政は破綻状態だ」と国民を脅迫することで、景気が悪くても減税で国民の負担を軽くするどころか、むしろ場合によっては増税してしまう〝経済宗教〟を意味する。

その信者は、日本国民の中で8000万人。これは消費減税に否定的な国民の総数をモリタク先生(森永氏の愛称)が概算したものだ。日本国民の7割ほどだ。本当にこれだけいるかどうかは別にして、経済政策を主導するはずの日本の経済学者のほとんどが含まれることは間違いない。

東日本大震災で、被災地はもちろん、国内のピンチが続く中で、財務省は増税を唱えた。震災復興のためには国債発行をして積極財政を行うのが常道だ。むしろ減税こそ重要だった。だが、日本の経済学者たちは、学界のトップからその子飼いまですべて増税の大合唱だった。日本の経済学者ムラでは、村長(=財務省の御用学者)に逆らうと、まともな職や評価を得られない。景気が悪ければ財政出動と金融緩和を積極的にやるべし、というのは世界の常識だ。私はこの主張を20年以上、いわゆる経済論壇で言い続けているが、その結果、「田中は学界の異端児」と経済週刊誌に書かれてしまう始末だ。『ザイム真理教』は言論界から禁書扱いを受けていると聞く。トンデモないことだ。

ザイム真理教の中身は、増税・負担増カルトだ。これになんとか抵抗したのが、安倍晋三元首相だった。だが、岸田文雄政権は、まさに信者そのものだ、というのがモリタク先生の直言だ。確かにそうだ。そもそもザイム真理教の言葉を生み出した雑誌記事にコメントを寄せたのは、何を隠そう私でもあるからだ。

ザイム真理教の特徴のひとつは財政均衡主義だ。これは給付金を増やしても、他方で同じ額だけ増税するというばかげた思考でもある。一例を挙げよう。「異次元の少子化対策」は、所得制限をもうけずに子育てをしやすい環境を生み出すというものだ。だが、給付の拡大と同時に扶養控除の見直しをするので、負担が増え恩恵が乏しい人たちが続出する。まさにペテンに近いやり口だ。

二十数年前に、モリタク先生は著書『日銀不況』で「日本銀行は関東軍である」と厳しく断罪した。今回も進撃ラッパが鳴った。〝敵は財務省にあり〟だ。 (上武大学教授・田中秀臣)

2023.6/6 06:30
zakzak
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