先月20日、シンガポールで世界三大投資家の1人、ジム・ロジャーズ氏と会談した。

ロジャーズ氏は「日本は一番好きな国」だといい、シンガポールの和民で鰻と抹茶パフェを「おいしい」と食べてくださった。『世界大異変――現実を直視し、どう行動するか』(東洋経済新報社)などの著書で、 日本破綻の警告をし続けている。

ちょうど為替が1ドル=150円台をつけた日だったが、まだまだ円安が続くと予想していた。

「日本の人口は12年連続減少しており、上昇する傾向がまったくみられない。債務超過は増えるばかりで、常に紙幣を印刷している。歴史を見る限り、それをやった国は成功したことがない。日本が破綻するのは、私の意見でなく算数の問題だ」という。

まったく共感だ。「日本の政策は明らかに円安を誘導している。むしろ、まだ、これだけ円が強いのに驚いている」といい、人口減少では経済成長は望めないとして、国民ウケの悪い「移民政策も真剣に考えるべきだ」と提言する。

日本は何事も「超一流」だけに、破綻のレベルも「一流」になるだろうと言っていた。「財政ファイナンスに限界が来て、国債の格付けが下がり破綻するのと、生活が苦しくなり国民が不満から暴動をおこすこと、どちらもあり得る」と、危機のきっかけを予想し、国が借金をし続けられるMMT理論については「都合のよい解決策でそんな理論はあり得ない」と一蹴する。

私も財政破綻を警告し続けているが、財政危機の局面で国際通貨基金(IMF)が救済に入ると、これまで見ていた。しかし、今回一番、象徴的だったのは「日本が財政破綻しても、IMFが救済してくれることはない。規模が大きすぎる。あっても絆創膏程度だ」と断言されたことだ。より背筋が凍る。

「財政破綻について警鐘を鳴らしている政治家はいるか」と問われた。「経営者だった私と、投資家だった、藤巻健史さんの2人だけだ。ともに議員を卒業したが」というと「2人だけか?」と驚いた表情をみせていた。

ワタミも海外の店舗展開の加速や、インバウンド(訪日外国人)への戦略などで網を張り、円安、財政危機を乗り越える種をまいておかなければならないと考えていたが、その速度を一段上げることにした。ロジャーズ氏は「フリーランチはあり得ない」という。バラマキ政策はいずれ財政上の限界が来る。

しかし、岸田文雄政権は総合経済対策で、光熱費・ガソリン代負担を9カ月で総額4万5000円軽減する案や、子育て世帯を対象に一律10万円相当を支給する案を打ち出し、バラマキ政策を続けている。

ロジャーズ氏に「日本はいつ破綻すると思いますか」と質問した。「来年はないだろう」と答えたが、「20年後にはなくなる」という。来週の後編では、ロジャーズ氏に聞いた「戦争」と「独裁者」をキーワードにした、さらにショッキングな未来予測を紹介したい。 (ワタミ代表取締役会長兼社長 渡邉美樹)
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