東京外国為替市場では円が対ドルで1ドル=144円台前半で小安く推移。米国の積極利上げや欧州景気不安を背景に対欧州通貨中心にドルの押し目買いが先行。その後は、イングランド銀行(英中央銀行)による国債市場介入の持続的効果に対する懐疑的な見方が強い中、リスク回避に伴うドル買いと円買いに挟まれながらも、米金利の低下一服を背景に円の上値が重い展開となっている。

●円は対ドルで午11時49分現在、前日比0.1%安の144円32銭。144円07銭を高値に一時144円47銭まで下落
 ●28日の海外市場では一時143円91銭まで上昇し、東京市場で付けた安値(144円87銭)から1円近く円高・ドル安が進行
●ポンド・ドルは0.9%安の1ポンド=1.0795ドル。ポンド・円は0.7%安の1ポンド=155円82銭
 ●28日は対ドルで1.5%、対円で1%の大幅上昇

  三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは、「米金利低下が続かなかったため、ドル・円の下げも続かなかった」と説明した上で、英国の問題が根本的に解決したわけではなく、債券市場が動揺しやすい状況が続くとなると「リスク回避的なドル高地合いも変わらない」と指摘。ドル・円も底堅く、「短期的に言えば144円を割り込んでどんどん下がっていくこともないだろう」と話す。

ドル・円と米10年債利回り/Source:ブルームバーグ
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  英中銀は28日、国債市場の崩壊を防ぐため劇的な形で介入に入った。トラス政権の大型減税案が引き起こした影響に対応するため、英国の長期国債を無制限で購入すると表明。10月3日に予定していた保有国債の売却(量的引き締め=QT)の開始を同月31日まで遅らせることも明らかにした。

  英中銀の介入を受け、28日の海外市場では英国を中心に欧米の債券利回りは急低下。米10年債利回りは4%を突破していたが、英中銀の発表後には一時3.70%を割り込んだ。金利低下を好感し、米国株は大幅上昇。外国為替市場では投資家心理の改善や米金利低下を背景に資源国通貨や欧州通貨が急反発し、ドルが全面安となった。

  一方、29日アジア時間の取引では米金利の低下が一服し、米10年債利回りは3.75%前後で推移。米株価指数先物は下落し、外国為替市場でドルが主要通貨全てに対して反発している。

  三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミスト(ニューヨーク在勤)は、「米国より欧州のインフレ状況の方が厳しいという事実から考えると、足元の市場の落ち着きは一時的にならざるを得ないと市場は考えるのではないか」と指摘。そもそものファンダメンタルズの弱さから欧州通貨が売られることでドルが上昇する圧力はまだ残るとし、ドル・円についてもドル高・円安バイアスが残るとみている。  

□背景
英中銀、長期の英国債を購入-市場沈静化に必要なだけ行う - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-28/RIX0JVDWLU6D01
英中銀、年金基金の国債売りクラッシュ懸念-運用ファンドに担保請求 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-29/RIY1GBDWRGG001
英国、財源の裏付けない減税はクレジットネガティブ-ムーディーズ - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-28/RIX028DWLU6B01
ポンドのショート自粛を、英財務相が金融業界幹部らに要請へ-スカイ - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-28/RIWWDCDWRGG001
シカゴ連銀総裁、世界市場の高ボラティリティーでも米利上げ推進必要 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-28/RIXT2RDWRGG001
サマーズ氏、英中銀の措置「正しい」-金融市場「不全」リスク高まる - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-28/RIXS2IDWRGG001

2022年9月29日 7:29 JST 更新日時 2022年9月29日 12:01 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-28/RIUOXEDWRGG001