[シンガポール/ニューヨーク 15日 ロイター] - 日銀が超金融緩和を解除せざるを得なくなる──。こうした予想に賭けている投資家は抱えるリスクがより大きくなり、ポジション運営のコストも割高化しつつある。日本国債市場を舞台にしたこれら投資家と日銀の対決が、一段と日銀優位に傾いているからだ。

今や主要国の中央銀行で、マイナス金利政策の継続が見込まれるのは日銀だけになった。そこで利上げに乗り出した他の主要国との金利差拡大が円を直撃すると、いざ好機と活発に動き始めたのがヘッジファンドやモメンタムに乗じる市場参加者だ。

ただ、円が1990年代終盤以来の安値まで沈むとともに、彼らはさらなる円安を見込むポジションを縮小し、今度は日銀の金融政策を直接の「標的」とする形で日本国債の空売りを仕掛けた。

日銀は、イールドカーブコントロール(YCC)に基づく無制限の買い入れを通じて10年国債の利回りを低水準(事実上の上限0.25%)に維持することを約束している。

もし、日銀がこの政策運営の枠組みを撤廃し、ゴールドマン・サックスが適正水準とみなす0.60%ないしそれ以上まで10年国債利回りが跳ね上がるなら、空売り取引は思いがけない利益を手にできる。

しかし、日銀が現行政策を維持する限り、空売りのコストは我慢できないほど高まりかねない。以前から非常なリスクを伴うという意味の「ウィドーメーカー」と称される日本国債の空売り取引だが、これまでの日銀による大規模買い入れを通じて、既に空売りコストはじわじわと上がり続けているのだ。

6月には日銀の国債買い入れ規模は月間ベースで過去最大に達し、最も人気がある現物債の賃借料率は一時1週間で3%まで高騰。その影響で国債先物の価格もひどく乱高下した。

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、アレス・コートニー氏は「最終的には面白い展開になる。だが、問題はレバレッジの効いた多くのポジションがあることで、現在の価格変動幅は大きなVaR(バリュー・アット・リスク)ショックを引き起こすことになる」と警告。許容可能な最大損失額を意味するVaRがとてつもなく膨らむ可能性があるとの見方を示した。

日銀は、今のところ政策変更のシグナルを全く発信していない。黒田東彦総裁はつい最近、必要ならば追加緩和に動く姿勢さえ改めて表明した。20─21日の金融政策決定会合でも超金融緩和が維持され、政策面のサプライズはないと見込まれている。

<逃げ出す投資家も>

コートニー氏が運用するファンドは、金利スワップを駆使する戦略を通じて、人為的にフラット化された日本国債のイールドカーブがいずれスティープ化すると想定するポジションを変更していない。

もっとも、少なくとも一部の投資家は最近の国債価格乱高下、ないしは日銀の大規模買い入れで動揺をきたし始め、空売りから撤退する兆しが出てきている。

10年国債利回りがここ数日、日銀の目標上限をやや下回る水準まで下がっていることや、空売り筋が好んで取引する国債先物の出来高が6月半ば以降、急速に減少したのがそうした兆しと言える。

運用資産9億5000万ドルのマクロ・ファンド、モジュラー・アセット・マネジメントのジミー・リム最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者は「多くの観光客(腰を据えずに市場に入ってきた投資家)は当面いなくなると思う。バリューに関しては、日銀が完全にYCCを撤廃しない限り、大幅な上昇余地はないだろう」と指摘。日銀がYCCの部分的修正のみに動いたとしても、市場の反応はそれほど劇的にはならないと付け加えた。モジュラー・アセットは6月以降、日本国債の空売りポジションを縮小している。

リム氏は「YCCが完全撤廃されるのを待つ間にキャリー(期間収益)はマイナスになる。来年のどこかの時点でYCCがなくなるとすれば、キャリーが40%のマイナスになってもおかしくないので、それがリターン(全体)を減らす」と説明する。

>>2 へ続く

2022年7月19日2:54 午後
ロイター
https://jp.reuters.com/article/japan-market-boj-idJPKBN2OU0AD