日本銀行は市場の圧力に屈してイールドカーブコントロール(YCC)を放棄することになれば、保有する国債で巨額の損失に直面するだろう。ヘッジファンドが日本国債をショートにするなど、圧力は増している。

物価上昇を目指す取り組みによって日銀は526兆円の国債を保有するに至った。これは発行残高のほぼ半分で日本の経済規模に匹敵する。しかしますます多くの投資家が、日銀がいつまで超緩和的政策を継続できるかに疑問を投げかけている。

日銀のデータに基づいたブルームバーグの計算によれば、政策転換によって国債イールドカーブ全体が100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上振れした場合、日銀は29兆円の含み損を抱えることになる。

アリシア・ガルシアエレロ氏らナティクシスのエコノミストは16日のリポートで、「黒田東彦総裁は米連邦準備制度と並んで政策を正常化するのが難しいだろう。日銀が発行済み国債の約半分を保有していることを考えると、利上げは銀行や生命保険会社、そして日銀自身のバランスシートに打撃を与えるからだ」とした上で、「それでも、現在の持続不可能な状況では、日銀は迅速に計画を立てる必要がある」と指摘した。

利回りを0.25%以下に制限するという公約を日銀が維持できることを市場が疑う中、日本国債先物は15日に大幅な下落となり、大阪取引所は一時的に売買を停止する「ダイナミック・サーキット・ブレーカー」を発動した。オプション市場では日銀がYCCを微調整すると見込む取引が増えている。

債券急落、先物が一時売買停止-日銀はチーペストの指し値オペを継続

可能性は極めて低いものの、日銀がYCCを放棄すれば影響は大きい。みずほ証券は、その場合10年物国債利回りが、現在上限とされている0.25%から1%超に跳ね上がり得ると見積もっている。

アシンメトリック・アドバイザーズのストラテジスト、アミール・アンバーザデ氏は「日本の長期債をショートにする市場参加者が増えるにつれ、国債の売りが強まると思う」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-16/RDKEVAT1UM1301