法務省は12月24日、2020年の犯罪情勢をまとめた21年版犯罪白書を公表した。20年1年間の刑法犯認知件数は、前年比で約18%減少。直近5年平均の約2倍の減少率で、新型コロナウイルスが広がる中、犯罪は例年以上に減っていたことが明らかになった。一方、インターネットを利用した詐欺など、一部のサイバー犯罪は増加した。

 白書によると、20年1年間の刑法犯認知件数は61万4231件で、ピーク時の285万4061件(02年)から18年連続で減少。戦後最少を更新した。前年からの減少率は17.9%で、15年〜19年の5年間平均9.2%の倍近い減少幅となった。

 特に全体の約7割を占める窃盗事案が前年比で21.6%減少。そのうち侵入盗は23.7%、乗り物盗は27.8%減少した。例年5%前後の減少率だった傷害事案も、前年比で10.5%減となった。

 法務省の担当者は「コロナで在宅者が増え、窃盗犯が民家に侵入しづらくなり、外出しないので突発的な自転車盗も減ったのではないか」と推測。緊急事態宣言で他人や友人と直接顔をあわせる機会がなく、傷害事案の発生も抑えた可能性があるとした。

 一方、一部のサイバー犯罪は増加傾向にある。インターネットなどを使った詐欺の検挙件数は1297件で、前年より32.8%増加。ネットやSNS(会員制交流サイト)を使った脅迫や名誉毀損(きそん)罪の検挙人数も増加した。

 今回の白書では、詐欺の実態を特集。オレオレ詐欺などの特殊詐欺の認知件数は1万3550件で3年連続減少する一方、検挙件数は04年以降最多となる7424件に上った。オレオレ詐欺や還付金詐欺など、主要な特殊詐欺で検挙された人のうち、約7割を30歳未満の若年層が占めていた。

 16年1〜3月の間、関東の裁判所で有罪判決が確定した特殊詐欺犯202人の裁判記録も調査。91人が現金を被害者から受け取る「受け子」やATMから引き出す「出し子」だったが、半数以上が指示役から報酬を受け取っていなかった。
2021年12月27日 09時00分
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2112/27/news055.html