政府は経済安全保障上の重要性が増す半導体の緊急強化パッケージの財源として、経済産業省の2021年度補正予算案に7740億円を計上する方向で最終調整に入った。半導体の国内生産拠点確保や研究開発の促進に集中投資する。生産設備の刷新や脱炭素化にも補助金を充てる。政府関係者が11月20日、明らかにした。

 国内生産拠点の確保には、6170億円を充てる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に新たな基金を設置し、認定を受けた半導体の生産基盤整備計画に資金補助を行う。補助率は50%で、複数年度をかけて交付する。半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場が最初の認定対象となる公算が大きい。

 研究開発分野には1100億円を投じる。「ポスト5G(第5世代)」の情報通信システムに不可欠な次世代半導体の研究開発に取り組む事業者に対し、NEDOからの委託事業として資金を支援する。

 生産設備の刷新には470億円を計上。自動車などに使われるアナログ半導体、マイコン、パワー半導体などは、逼迫(ひっぱく)すれば国民生活への影響や経済的損失が大きいが、日本の国際競争力低下に伴い、閉鎖に追い込まれる拠点は多い。安定供給の確保が特に重要なこれらの半導体の製造設備を対象に、更新や増設、脱炭素化を後押しする。

 半導体は「産業のコメ」といわれ、米中が覇権を争う経済安保の分野で最重要の戦略物資に位置付けられる。ただ、日本の世界シェアは近年10%程度まで低下。国内需要の6割超を台湾や中国などからの輸入に依存している。

 政府は岸田文雄首相を議長とする経済安保推進会議を創設し、戦略物資の供給網支援強化を急いでいる。軍事・経済両面で先端技術の核となる半導体の確保や開発、人材育成を国家戦略として進める方針だ。
2021年11月22日 07時00分
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