ここ数年で食用油の研究が進み、スーパーの棚には数多くの商品が並ぶようになった。しかし、何を選べばいいかわからなくなっている人も多いはず。そこで、体脂肪を落としたい人や、これからの季節に多い冷えに悩んでいる人におすすめなのが、MCTオイルだ。

 中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglyceride)の頭文字で呼ばれるこのオイルは、アブラヤシやココヤシの実が原料。一時期流行したココナツオイルから、中鎖脂肪酸だけを抽出したものだ。医療用としては数十年前から使用されており、適量の摂取は安全性が確認されている。このオイルがなぜダイエットに向いているのかというと、ふだんあまり働いていない、脂肪を燃焼する回路が働くようになるためだ。

 私たちの体には、食べたものからエネルギーを得るための回路が2つある。一つは糖質をエネルギー源とする「糖燃焼回路」で、もう一つは、脂肪(油)をエネルギー源とする「脂肪燃焼回路」だ。一定量の運動や栄養や食事量不足などで、血液や筋肉中のブドウ糖が減ってくると脂肪燃焼回路が円滑に働き始める。

 ブドウ糖は糖質からさらに分解された、体内ですぐにエネルギーになる物質なのはご存じの通り。脂肪燃焼回路で、このブドウ糖にあたるのがケトン体だ。脂質から作られるが、なかでも中鎖脂肪酸からは素早くできる。そのためMCTオイルを摂取すると、きつい運動をしなくても脂肪燃焼回路が円滑に働き、糖燃焼回路とともに2つの回路が働くように。ダブルの回路でエネルギーを得られるようになれば、より脂肪燃焼効果が得られることになる。

 生活習慣病やダイエットに詳しい、虎ノ門中村クリニック(東京都港区)の中村康宏院長=顔写真=は、MCTオイルを継続的に摂取することでエネルギーが通常より増加し、熱産生も正常となることが確認できれば、体質の変化を可視化できる。その結果、体表温度が上昇するのではないかという点に着目した。

 「代謝とは、外から栄養などを取り入れて、化学反応を起こしたり合成したりすることです。その代謝で生み出すエネルギーによって、人間の活動性が維持されます。ヒトの代謝には、基礎代謝や活動代謝に加えて、食事をとることでも代謝が行われます。そのときに発生するエネルギーは食事誘発性熱産生といい、過去の論文では、健康な人でもMCTオイルを5〜10グラム摂取すると、同量のサラダ油などの植物油よりも食事による熱発生が1・5倍程度大きくなるということが示唆されています。そこで、MCTオイルをとると食事による熱産生が増え、継続することによって癖づくのではないかということを検証してみました」

 サーモグラフィによる測定を実施、6人にMCTオイルを2週間毎日6グラム摂取してもらい、比較群として一般的な植物油を同様に6人に摂取してもらい、比較検討した。その結果、MCTオイルを2週間継続摂取すると、朝食前のうなじから首筋、腕、すね・ふくらはぎの検証した部位で全員の体表温度の上昇を確認。ただし比較群で同様の結果を得た人もいた。

 さらにMCTオイル群のアンケートでは、「食べた後に体がポカポカした」「お腹の冷えを感じにくくなった」「汗をかきやすくなった」など、冷えの改善が目立ったという。ダイエット目的はもちろん、冷えの改善や持久力不足を自覚している人にもよさそうだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e8d6fa7d517930944ed4f67591d0f692ace7413