【シリコンバレー=白石武志】米アップルが28日発表した2021年7〜9月期決算は売上高が前年同期比29%増の833億6000万ドル、最終利益は62%増の205億5100万ドルだった。そろって7〜9月期として過去最高を更新したが半導体不足によって供給面の制約を受け、主力の「iPhone」の売上高は市場予想を下回った。

新型コロナウイルス禍における在宅勤務や遠隔学習の広がりを追い風にアップルは各種製品・サービスの販売を伸ばし、売上高の伸び率は1〜3月期に54%、4〜6月期は36%を記録していた。7〜9月期も高い成長力を保ったものの、在宅需要には一服感が漂う。供給面の制約も重なって売上高の伸び率は29%に下がった。

ティム・クック最高経営責任者(CEO)は28日に開いたアナリスト向けの電話会見で、アップルのサプライチェーン(供給網)に制約を与えた要因について「世界的な半導体不足と新型コロナウイルスに伴う東南アジアでの製造上の混乱の2つだ」と説明した。供給制約による売り上げ機会の逸失額は7〜9月期は約60億ドル(約6800億円)に達し、4〜6月期の30億ドル弱から倍増した。

2つの要因のうち東南アジアにおける混乱は10月に入って解消しつつあるが、半導体不足の影響は長引いているという。クック氏は同社にとって最大の商戦期である10〜12月期について「7〜9月期に経験した60億ドルよりも大きな供給制約(の影響)が生じる」との見通しを示した。

7〜9月期の製品・サービス別の売上高は全体の5割弱を占めるiPhoneが47%増の388億6800万ドルだった。高速通信規格「5G」に対応する新しい機種が好調だったものの、事前の市場予想(415億ドル前後)には届かなかった。28日の米国市場の時間外取引でアップル株は終値を下回って取引されている。

パソコン「Mac」の売上高は2%増の91億7800万ドル、タブレット端末「iPad」は21%増の82億5200万ドルだった。両製品の売上高の伸び率は在宅需要が盛り上がった1〜3月期にはそれぞれ70%を超えていたが、足元では減速傾向にある。

アップルが7月に発表した4〜6月期決算では、世界的な半導体不足によってMacやiPadなどの供給が制約を受け、30億ドル弱の売り上げ機会を逃したと明らかにしていた。7〜9月期には半導体不足の影響が主力のiPhoneにも及び、逸失売上高は4〜6月期よりも大きくなるとの見通しを示していた。
2021年10月29日 6:07 (2021年10月29日 7:56更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN282WK0Y1A021C2000000/