→金融政策は据え置き、先行きの景気回復シナリオを維持
→供給制約で輸出・生産が減速、長期化なら経済に一段と下振れリスク

日本銀行は経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2021年度の実質国内総生産(GDP)と消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)の見通しを下方修正した。22年度のGDPは引き上げた。28日の金融政策決定会合後に公表した。

  金融政策運営は現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持を賛成多数で決めた。ブルームバーグがエコノミスト49人を対象に19−22日に実施した調査では、48人が金融政策の現状維持を予想していた。

    予想時点 実質GDP コアCPI
2021年度 10月  3.4     0.0
2021年度 7月  3.8     0.6
2022年度 10月  2.9     0.9
2022年度 7月  2.7     0.9
2023年度 10月  1.3     1.0
2023年度 7月  1.3     1.0

  展望リポートでは景気の先行きは、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいく下で「回復していくとみられる」とのシナリオを維持した。ただ当面は輸出・生産が供給制約によって「一時的に減速すると見込まれる」と明記した。

  経済のリスク要因でも供給制約の影響を挙げた。半導体不足やサプライチェーン障害による部品調達難が世界的に見られ、想定以上に長引いたり拡大したりする場合は「見通し期間の前半を中心に経済が一段と下振れるリスクがある」と分析した。

  海外経済の動向もリスク要因とし、先進国の景気刺激策の一巡によって、海外経済の成長率は見通し期間の終盤にかけて「徐々に減速していくとみられる」と指摘。先進国では緩和縮小が意識されており、「グローバルな金融環境が想定以上に引き締まると、新興国を中心に海外経済が下振れるリスクがある」としている。

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日銀本店Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  物価に関しては、為替相場の変動や国際商品市況をリスクに挙げ、輸入物価や国内価格への波及の動向を「引き続き注意してみていく必要がある」と指摘した。予想物価上昇率の現状判断を「持ち直している」とし、従来の「横ばい圏内で推移している」から上方修正した。 

  経済活動の再開やインフレ長期化観測を背景に、米欧の中央銀行では金融緩和策の縮小が議論されている。米連邦準備制度理事会(FRB)は早ければ11月半ばからテーパリング(資産購入の段階的縮小)を開始すると見込まれており、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は年内にも利上げに踏み切る可能性が高まっている。2%の物価安定目標に距離がある日銀との違いが鮮明になっている。

 政策運営方針
●日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用
●長期金利がゼロ%程度で推移するよう上限を設けず必要な額の長期国債を買い入れ。許容変動幅は上下0.25%程度
●上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J−REIT)は年間約12兆円、約1800億円相当の残高増ペースを上限に必要に応じ買い入れ
●コマーシャルペーパー(CP)や社債などは2022年3月末までの間、合計約20兆円の残高を上限に買い入れ

2021年10月28日 11:45 JST 更新日時 2021年10月28日 13:07 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-10-28/R1KJUBT0AFB601