アフガニスタンでは、反政府武装勢力タリバンが首都カブールに進攻し、日本時間の16日朝早く、政府に対する勝利を宣言した一方、ガニ大統領は出国し、政権は事実上、崩壊しました。現地では、出国を試みる人たちによる混乱も見られる中、アメリカ政府は、こうした人たちが国外に安全に退避できるよう求める共同声明を日本などとともに発表しました。

アフガニスタンでは、現地で20年近くにわたって軍事作戦を続けてきたアメリカ軍が今月末までの撤退を進める中、反政府武装勢力タリバンが攻勢を強め、15日までに国内のほぼすべての州都を支配下に置いたほか、首都カブールに進攻し、大統領府や政府庁舎を制圧しました。

タリバンは、日本時間の16日朝早く声明を出し、政府に対する勝利を宣言したほか、ガニ大統領も自身のフェイスブックで出国したことを認め、政権は事実上、崩壊しました。

これまでのところ、カブール市内では、大規模な戦闘などは伝えられていませんが、現地のジャーナリストによりますと、店舗などでの略奪も起きているということで、治安の悪化が懸念されています。

カブールの国際空港には、出国を試みる人たちが殺到し、駐機場にまで人があふれるなど、混乱が生じています。

こうした中、アメリカ政府は15日、日本やイギリスなど60か国余りと共同声明を発表しました。

声明では、タリバンを念頭に「アフガニスタン全土におよぶ権力を持つ者は、人命と財産を保護し、治安と秩序を速やかに回復させる責任がある」として、アフガニスタン人や外国人が国外に安全に退避できるよう求めています。

そのうえで「アフガニスタンの人たちは安全と尊厳が保たれた状態で生活ができなければならない」として、今後の政権運営にあたって、女性の人権の確保などを求めています。

タリバン側は、AP通信の取材に対し、政権の樹立に向けて数日以内にほかの勢力と協議を始めることを示唆していますが、タリバンがかつてのように厳格なイスラム法に基づいた政権運営を進めるのではないかという警戒感も国際社会に広がっています。

米バイデン政権 “軍さらに増派で退避加速”
アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが首都カブールに進攻し、政権が事実上崩壊したことを受け、アメリカのバイデン政権はこれまで現地の大使館職員などを国外に退避させるために派遣するとしていた部隊をさらに1000人増強し、6000人規模の部隊で退避を加速させると発表しました。

アメリカ国務省と国防総省は15日、合同で声明を発表し、今後48時間以内にアフガニスタンの首都カブールにある国際空港におよそ1000人の部隊を追加で派遣し、現地の部隊を6000人規模に拡大することを明らかにしました。

派遣された部隊は空港の管制業務を引き継ぎ、アフガニスタンに暮らす数千人のアメリカ人と、アメリカ軍に通訳などとして協力してきた現地の関係者とその家族の国外への退避計画を加速させるとしています。

国務省によりますと、すでにアメリカ大使館の職員は全員、カブールの国際空港に避難したということです。

これに先立ちブリンケン国務長官は「われわれの作戦を妨害するいかなる試みや部隊への攻撃に対し、強くきぜんとした対応をとる」と述べ、関係者の退避を妨害しないよう、タリバンに強く警告しました。

バイデン政権は、現地の大使館職員の退避のために前日の14日に追加の部隊の派遣を発表したばかりですが、政権が事実上崩壊したことで、さらなる対応に追われています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210816/k10013205371000.html