【シリコンバレー=白石武志】ビデオ会議システムの米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズは18日、コールセンター向けのクラウドサービスを手掛ける米ファイブ9を買収すると発表した。株式交換による買収額は147億ドル(約1兆6000億円)相当。ズームにとって過去最大のM&A(合併・買収)となる。

カリフォルニア州に本社を置くファイブ9は米ナスダックに上場している。自宅に居ながら電話応答などのコールセンター業務ができるクラウドサービスに強みがあり、世界で2000社を超える顧客を抱える。ズームと同じく新型コロナウイルスに伴う在宅勤務の普及で業績を伸ばしており、2020年12月通期の売上高は前年同期33%増の約4億3400万ドルだった。

ズームはファイブ9の株式1株につき、ズームの普通株式0.5533株を割り当てる。先週末のファイブ9の終値に対し、約13%のプレミアムを付けた。取引の完了後、ファイブ9はズームの事業部門となり、ファイブ9のローワン・トロロープ最高経営責任者(CEO)はズームの社長に就任する。ズームのCEOは引き続きエリック・ユアン氏が務める。

米国では新型コロナのワクチン接種者の増加に伴って、オフィス勤務を再開させる動きが広がっている。ズームはファイブ9の顧客企業に自社の通信サービスの採用を働きかけることで、ビデオ会議システムの成長鈍化を補う狙いとみられる。ズームのユアンCEOは声明で「当社は自社のプラットフォームを強化する方法を継続的に模索しており、ファイブ9の買収は自然な流れだ」と述べた。
2021年7月19日 12:41 (2021年7月19日 12:48更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1926W0Z10C21A7000000/