新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、忘年会をとりやめる企業が急増している。飲酒を伴う会合に厳格なルールを設ける会社もあり、社員からは「実質的な禁止令」との声も上がる。「第3波」の到来で、年末恒例の忘年会はなくなってしまうのか。

「忘年会なんて言い出せば『非国民』扱いされかねない」。東京都内の証券会社で働く男性(39)は話す。

 この会社では飲酒を伴う会合のルールが新たに定められた。人数は4人以下▽時間は2時間まで▽1次会で終わらせる――。顧客への営業にもなるため飲み会は禁止されていないが、社員だけの飲み会は自粛を強く求められている。

 男性が所属する営業部門では昨年、約80人を集めて忘年会が開かれた。会費の一部は会社が補助し、ビンゴ大会で盛り上がった。しかし、今年はそうした話題が出ることもない。「社内コミュニケーションは希薄になった気もするが仕方ない」。さみしさを感じながらも男性は会社の方針に従っている。

 民間の信用調査会社東京商工リサーチ(東京都)が全国1万59社を対象に実施したアンケート調査によると、忘年会と新年会を「開催しない予定」と答えた企業は全体の9割近くにのぼった。また、法人向けデリバリーサービスを展開する日本フードデリバリー(同)のアンケートでは、回答があった利用者852人のうち61・5%が「忘年会に参加したくない」「どちらかと言えば参加したくない」と答えている。担当者は「『参加したくない』と回答した人の9割近くが感染への不安を理由に挙げた。忘年会のスタイルに変化が出ている」と分析する。

 飲食業界を巡る状況は厳しさを増している。

 全国でビアホール「銀座ライオン」を展開するサッポロライオン(同)では例年、11月ごろから100人規模のホールの予約が埋まっていくが、今年はまだゼロという。大企業の忘年会や学校の同窓会などが見送られ、少人数の飲み会が中心になっている。

 同社は5月以降、大皿料理から個々に料理を提供するコースを導入。宴会時間も従来の2時間や2時間半よりも短い1時間半のコースを設けた。それでも、これまでに系列の10店が閉店した。担当者は「秋になって回復の兆しが見えたが、感染の再拡大で下がり始めた。これからもコロナ対策を徹底するしかない」と話す。

 帝国データバンク(同)によると、20日時点の新型コロナ関連倒産は723件。このうち飲食店は110件と最多で、2番目のホテル・旅館の約1・7倍となっている。同社は「緊急融資や国の支援などで、この半年間なんとか持ちこたえている状態。年末商戦が『第3波』で冷え込めば、気持ちが切れる経営者が出てもおかしくない。倒産が急増する可能性がある」との見通しを示す。
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