安倍晋三首相は4日、新型コロナウイルス対策について首相官邸で記者会見を開いた。6日に迎える緊急事態宣言の期限を31日まで延長すると表明した。延長による影響をにらみ家賃支援や雇用調整助成金の拡充などの追加経済対策を「速やかに講じる」と述べた。

首相は延長について「当初予定した1カ月で緊急事態宣言を終えることができなかったことは国民におわびする。延長は断腸の思いだ」と語った。

■家賃負担軽減や雇調金の拡充 「現時点では感染者の減少が十分なレベルではない。医療体制の逼迫した状況を改善するには1カ月程度の延長が必要と判断した」と説明した。

追加経済対策に関しては「飲食店などへの家賃負担の軽減、雇用調整助成金のさらなる拡充など与党での検討を踏まえて講じる」と早期策定へ意欲をみせた。

宣言の解除に向けては新規感染者が1日100人を下回る必要があるとの認識を示した。「全国で毎日100人を超える方々が退院などで回復しているが、その水準を下回るレベルまでさらに新規感染者を減らしていく必要がある」との基準を引いた。

■一部地域で早期解除の可能性

14日をメドに「専門家に改めて地域ごとの感染状況を分析してもらい、可能であると判断すれば期間満了を待つことなく宣言を解除する」と一部地域で早期解除する可能性に言及した。

新型コロナ対応が長期化することには「ウイルスの存在を前提にしながら緊急事態の先の出口に向かって一歩一歩前進していきたい」と訴えた。専門家会議がまとめた「新たな生活様式」を参考にしつつ「正しく恐れながら日常の生活を取り戻していく。命を守るためのコロナの時代の新たな日常を1日も早く作り上げなければならない」と強調した。

行動制限をめぐっては感染拡大の原因となる3密(密閉・密集・密接)を避けることを大前提に「外出それ自体が悪いわけではない」と状況次第での対応を促した。「5月は出口に向かって真っすぐに進む1カ月であり、次なる流行に備える守りを固める1カ月でもある」と呼びかけた。

感染拡大が続く状況での政府の権限強化には慎重な姿勢だった。「どうしても必要な事態が生じる場合は当然検討するが、今は緊急事態のさなかだ」と現時点では検討を急がない構えだ。

非常時に政府権限を強める緊急事態条項を加える憲法改正に言及したことには「今の事態だから申し上げているのではなく、ずっと申し上げている」と述べ、新型コロナに便乗したとの指摘に反論した。

感染の有無を調べるPCR検査体制は拡充する方針だ。「東京など大都市圏を中心に対策を徹底していきたい」と語り、すでに全国で20カ所、東京で12カ所の検査センターを設置したとの事例を挙げた。抗体検査についても「有意義な方法だ。速やかに実施に移っていきたい」と意欲をみせた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58777010U0A500C2I00000/