【シリコンバレー=佐藤浩実】米IBMは30日、バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO、62)が4月に退任し、クラウド事業を率いるアービンド・クリシュナ上級副社長(57)がCEOに昇格すると発表した。IBMのトップ交代は8年ぶり。市場成長が続くクラウド事業に注力する姿勢を鮮明にし、停滞する業績の立て直しをめざす。

クリシュナ氏はインド工科大学カンプール校出身で、渡米後の1990年にIBMに入社した。最近では約3兆7千億円を投じたソフトウエア大手、レッドハットの買収を指揮。IBMの数少ない成長分野であるクラウド事業のほか、人工知能(AI)や量子コンピューターを扱う研究部門を率いている。

ロメッティ氏はCEOと社長を兼任していたが、クリシュナ氏の昇格にあわせて、社長にはレッドハットのジェームス・ホワイトハーストCEO(52)が就く。クラウドや技術に明るい2氏がIBMのトップに就くことを株式市場は好感し、同社の株価は30日の時間外取引で5%近く上昇した。

米アマゾン・ドット・コムが先んじたクラウドは米IT(情報技術)企業の主戦場になりつつある。アマゾンは30日の決算で2019年のクラウド事業の売上高が前年比37%増の350億ドルになったと発表。14年に就任したマイクロソフトのサティア・ナデラCEOは「クラウド企業への転身」を進めて株式市場の評価を復活させた。
2020/1/31 7:58 (2020/1/31 8:29更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55073470R30C20A1000000/