[上海 21日 ロイター] - 中国湖北省武漢市で検出され、感染が広がった新型コロナウイルスによるとみられる肺炎は20日、首都北京や上海などでも感染者が確認された。また新華社によると、国家衛生健康委員会は同日、人から人への感染を確認した。

新型肺炎を調査する中国政府の専門家グループのトップを務める鍾南山氏は、肺炎が人から人へ感染することを確認したが、防疫態勢を強化すれば感染拡大に歯止めをかけることができるとの見解を示した。

一方、武漢市の衛生当局は21日、4人目の死者を確認した。死亡したのは89歳の男性で、13日に肺炎の症状を訴え、呼吸困難に陥るなどしたことから、5日後に入院。19日に死亡した。

コロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)の対策を率いた実績で知られる鍾氏は、予防措置さえとれば、2002━2003年に世界中に感染が拡大し、800人近くが死亡したSARSのような事態になる危険性はないと語った。

同氏は、感染はまだ初期段階にあり、中国には優れた監視・検疫システムがあるため感染を制御できると話した。

オーストラリア政府は21日、武漢市からの渡航者全員の検疫を開始する方針を明らかにした。

米国や多くのアジア諸国など、武漢市からの渡航者に対する検疫を強化する国が相次いでいる。

国営テレビによると、中国当局は現地時間20日午後6時(1000GMT、日本時間午後7時)時点で国内で合計217人の感染を確認。このうち198人が武漢という。

また、武漢市衛生当局によると、市内の医療従事者15人が新型肺炎に感染、1人に感染の疑いがある。感染者のうち1人は重体という。

上海では、当局が2人目の感染を確認。1月初めに武漢市を訪れていた35歳の男性で、この他にも感染が疑われる4人を監視下に置いているという。

世界保健機関(WHO)は20日、中国で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎に関して、22日に緊急委員会の会合を開催すると発表した。

習近平国家主席は20日、感染拡大の阻止と患者の命を救うことが最も優先されると表明した。

国営テレビによると、習主席は「国民の命と健康が最優先されるべきで、感染拡大は必ず抑え込むべきだ」と述べた。

ウイルスの封じ込めが難しいことに加え、中国では旧正月の大型連休が今週始まり、多数が国内外に旅行することから感染拡大が懸念されている。

医学研究支援団体ウェルカム・トラストの感染症専門家、ジェレミー・ファラー代表は、武漢は大規模なハブで、旧正月で旅行客が増えることを考えると、懸念度は引き続き高いとし、感染がさらに拡大する可能性があるとした。

国外では、韓国疾病予防対策センター(KCDC)がこの日、前日に武漢からソウル近郊の仁川国際空港に到着した中国人女性(35)からウイルスを検出したと明らかにした。国内で感染が確認されたのは初めて。到着時に高熱などの症状があったため、すぐに隔離されたと説明した。

先週にはタイで2例、日本で1例の感染を確認。患者は全て武漢からの旅行者、または同市を最近訪問していた。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのMRCセンターの報告では、武漢では類似の症状を持った患者が今月12日までに1723人に上ったと発表。中国の保健当局はこれについてコメントしていない。

前出のファラー氏は「感染の大流行が極めて懸念される。不確実な部分はあるが、人から人に感染するのは明らかだ」と述べた。

2020年1月21日 / 01:36
ロイター
https://jp.reuters.com/article/china-health-pneumonia-idJPKBN1ZJ1UU?il=0