【ラスベガス=岩戸寿】パナソニックの津賀一宏社長は7日、米で開催中の世界最大のデジタル技術見本市「CES」で、日本経済新聞などの取材に応じた。米国で「もう一度家電をやり直す時期が来た」と話し、サービスを紐(ひも)付けた新家電を展開する考えを示した。同社は元グーグル幹部などを招いて新しい家電のあり方を模索しており、従来型家電をほぼ展開していない米国でビジネスモデルの構築を目指す。

「暮らしの目線で困りごとを解決するサービスをつくっていく。それを補助するのがハードだ」。津賀氏は米国での展開を検討する新しい家電の考え方をこう説明した。サービスを主、ハードを従とする「主従逆転」と話し、グーグル元幹部で昨秋にパナソニックに参画した松岡陽子氏がその仕組み作りを担っていると説明した。

パナソニックは展示でも、ひとの生活を把握するためのセンシング技術や、それぞれのハードが有機的につながって付加価値を生む仕組みを紹介する。家庭内の機器をインターネットでつなぐプラットフォーム「ホームX」を推進。強みとしてきたハードに加え、足元で人材補強を進めるデジタルを組み合わせたサービスや製品を展開していく考えだ。

米国では従来、テレビや付随するビデオなどを展開してきた。テレビの撤退で商品が減り、現在展開するのは電子レンジなどにとどまるという。家電事業が米国売上高に占める割合は5%にも満たない。一方で日本はシェアの高い商品も多い。新しい家電の事業モデルを構築する観点では「米国の方がやりやすい」とした。

企業向け事業へのシフトで、ブランド力や認知度は下がっている。津賀氏は「BtoBだけでブランド維持は難しい」と家電の重要性を強調しつつ、「従来の形の家電ではなく、新しい家電を展開していく」と語った。

一部で家電事業の本社を中国に移すことが報じられた。津賀氏は「大きなマーケットの近くでやるのが家電事業」とし、中長期でみれば「中国の方が日本よりも変化の比率が大きい」とした。ただ、「単純に事業部を移すという話ではない」とし、「中国の組織能力が上がり、自然と中国にシフトするというのが基本だ」と話した。時間軸については「5〜10年かけてという話」とした。

パナソニックと住宅事業を統合したトヨタは6日、先進技術で年の効率や利便性を高める新しい「スマートシティー」構想を発表した。津賀氏は「(今回発表した件は)トヨタが長年温めてきたもので、協力を求められればやるが、積極的に仲間に入れてくれ、というものではないかもしれない」と話した。

今後のスマートシティーでの連携については「日本だけでなくアジアでもやろうということ。モビリティはトヨタ、『ホームX』のようなモノはパナソニックが裏から支えましょうということ」との考えを示した。
2020/1/8 11:55
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54155140Y0A100C2I00000/