ソフトバンク傘下のヤフーとZOZOは12日午後5時半から東京都内で記者会見を開いた。ヤフーの川辺健太郎社長は「ZOZOをグループに迎え入れて、インターネットの未来を作っていきたい」と述べた。

ヤフーはTOB(株式公開買い付け)でZOZOを買収する計画だ。川辺社長は買収の意義を「ネット通販事業の営業利益が1.8倍になる。ヤフーは広告事業の1本柱とみられていたかもしれないが、ネット通販を2本目の柱にできる」と説明した。

ヤフーが自社の電子商取引(EC)モール内に新設する「ペイペイモール」に衣料品通販サイト「ZOZOタウン」が出店する。ZOZOは若者の利用者が多いため、ヤフーにとっては顧客層が広がり「両社ともに顧客基盤を固められる」(川辺社長)。

同日、社長を退任したZOZOの前沢友作氏は「難しい勉強をしたこともないし、社会人経験もなかったが、好きなことをひたむきにやって、気づいたら社長になっていた。夢のような時間を過ごしてきた」とこれまでを振り返った。

後任の沢田宏太郎社長については「私は時代の香りや雰囲気を直感的に野性的に感じてやってきた。沢田社長は真逆。ロジカルな経営手法を得意としている」と述べた。

前沢氏は2023年に月旅行を予定している。今回の退任についても「宇宙に行くためのトレーニングなど、準備に割く時間が多くなる」ことが理由だと説明した。

もっとも「もう一度、事業をやりたい」と、引退するわけではないとも話した。今朝、社員らに提携を伝えたときの様子を思い起こし、涙を浮かべる一幕もあった。

会見には、前沢氏がかねて尊敬する経営者として名前をあげていたソフトバンクグループの孫正義社長も途中から参加した。孫氏は「前沢君から相談に乗ってくださいと申し出があった」と、今回の提携が前沢氏からの打診をきっかけに始まったと明かした。

孫氏は前沢氏と色違いのTシャツを着用。普段は奔放な言動が話題を呼ぶ前沢氏だが、孫氏がスピーチするあいだは体の前で両手を組み、背筋を伸ばし、時折お辞儀しながら聞き入った。

前沢氏の後任としてZOZOの社長となった沢田宏太郎氏は「アパレル業界をこれまで以上に盛り上げられることにわくわくしている」と話した。

コンサルタント出身の沢田氏は「ZOZOは創業から21年、企業として、そろそろ大人の入り口に立つことを求められている。今後はトップダウンから、社員の力、組織の力を生かす経営を進める」とも説明した。

ただ、「つまらない大人になるつもりはない。やんちゃな大人になりたい」と付け加えた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49731250S9A910C1TJC000/