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「過去最強」クラスの台風15号が縦断した9日朝の首都圏。JR東日本などの在来線が初めて、始発から軒並み運休に踏み切った。ターミナル駅や郊外駅などは朝から混雑し、乗客からは「情報の伝え方をもっと考えて」との声も。訪日外国人客にどう周知するかも課題になっている。

9日朝のJR東京駅。通勤時間帯になっても人はまばらだったが、在来線が運行再開するとされた午前8時ごろから混雑し始め、スマートフォンで運行情報を確認する人が目立った。

出張で横浜市に向かう群馬県太田市の男性会社員(50)は午前6時台の上越新幹線で東京駅まで来た。「昨日の段階で周知されていたので混乱なくここまで来られた」と落ち着いた様子だった。

会社からは8日に「運行状況をみて出勤時間を柔軟に」と指示があったという。「同僚は在宅勤務を選んだ。自分ももし会議に間に合わなかったらパソコンを使って参加する」と話していた。

ただ、情報が十分に行きわたっていたわけではない。「もっと計画運休を知らせる手立てはなかったのか」。知人と観光に来ていた島根県奥出雲町の主婦(63)は不満げな表情を浮かべた。

8日夜の寝台列車で帰宅する予定だったが、運休を知ったのは東京駅に着いてから。急きょビジネスホテルに宿を取った。「都内は風も弱く、まさかという感じだった。情報を周知する方法を考えてほしい」と注文をつけた。

運行がなかなか再開されないことにいらだつ声も相次いだ。線路内の倒木で運行再開が遅れた山手線。再開を待っていた群馬県高崎市の会社員、藤吉裕介さん(43)は「午前8時ごろに再開するという今朝のニュースを見てきたが、1時間が過ぎてもまだメドがたっていない。運行状況をこまめに確認しても結局は来てみないと分からない」と疲れた様子だった。

「運転開始は9時ごろになります。振り替え輸送は実施しておりません」。9日午前8時ごろ、京王線府中駅(東京都府中市)でアナウンスが流れると、閉鎖中の改札前に集まっていた約200人の通勤客などからため息が漏れた。

「もう30分も待ちぼうけだ」。府中市に隣接する国分寺市の男性会社員(42)は肩を落とす。普段はJR中央線の国分寺駅を利用して都心に通勤しているが、同線の計画運休を知り、妻に車で府中駅まで送ってもらった。「せっかくここまで来たのに当てが外れた。情報も混乱していて、どんな方法を選べば正解なのかも分からない。週の初めなのにどっと疲れてしまった」

府中駅ではタクシー乗り場にも約50人が列を作った。午前10時から取引先との打ち合わせがあったという男性会社員(36)は「このままでは間に合いそうもない。謝罪の電話をするしかない」といらだちを見せていた。

訪日外国人客も戸惑った。ポルトガルから旅行中のイネシ・アルマイダさん(32)は9日朝、金沢市に向かうために着いた東京駅で、混雑を見て初めて計画運休に気付いた。「インターネットで調べてみたが何も情報は出てこない」。利用する北陸新幹線が平常通り運転していることを知って安心を取り戻したが「もっとネット上で英語で情報を得られるようにしてくれないと」と話した。

スペインから旅行中で9日に帰国予定のホセ・ビセンテ・セペダ・ゴメスさん(24)は8日夜に利用していた地図情報アプリで計画運休を知った。「午前10時まで電車が運休すると知ったので、これからタクシーで空港に向かおうと思う。いつまで運休なのか教えてくれたから僕にとっては十分だった」と話した。

2019年9月9日 11:20
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49563030Z00C19A9CC0000/