米デルタ航空が2020年3月、アジアのハブ(拠点)と位置付けてきた成田空港から撤退し、羽田空港に日米路線を集約する。東京五輪・パラリンピックに向けて都心上空を通過する新ルートの運用開始を機に、羽田が国際線受け入れ体制を拡充するためだ。都心に近い利便性から海外航空各社の成田発着便の見直しにつながる可能性もあり、アジアの玄関口としての地位を維持できるか正念場を迎えている。

「ショックだ。北米線が成田の強みだったのに」。空港を支えてきた地元自治体からは落胆の声が上がる。1978年の開港以来、前身のノースウエスト航空時代からデルタはアジア・ハブとして成田を活用。日本航空、全日本空輸とともに3社で存在感を示してきただけに、その一角が崩れる衝撃は大きい。

 ただ、運営元の成田国際空港会社は手をこまねいてきたわけではない。着陸料の割引をはじめ定期便就航を喚起しているほか、15年には格安航空会社(LCC)専用ターミナルを開設。新規就航が相次ぎ、今年の夏休み期間(9〜18日)の国際線旅客数は推計107万3500人に達し、10日も6万人超が出国した。

 空港会社の田村明比古社長はデルタ撤退について「去る者があれば、来る者もある」と話しているが、デルタが成田からハブを移す韓国・仁川のほか、北京、シンガポール・チャンギ、さらに羽田が加わる空港間競争は一段と激化する見通し。揺らぐ成田は第3滑走路新設など機能強化の巧拙が問われそうだ。 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190811-00000005-jij-bus_all