→大企業・製造業はプラス7、米中貿易摩擦や中国経済減速など懸念
→非製造業はプラス23と2ポイント改善−為替想定は109円35銭

日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(短観)の6月調査で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は3月の前回調査から悪化した。悪化は2期連続。米中貿易摩擦による世界経済への懸念が景況感を下押しした。

□キーポイント
・景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いたDIは大企業・製造業がプラス7と前回調査から5ポイント悪化ーブルームバーグ調査の予想はプラス9
・非製造業はプラス23と2ポイント改善−予想はプラス20
・先行きは製造業がプラス7と横ばい、非製造業はプラス17と悪化を見込む
・2019年度の為替想定は1ドル=109円35銭と前回(108円87銭)から円安方向に設定

景況感の動き
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□エコノミストの見方
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミスト:
・大企業・製造業DIの落ち込みが鮮明になった一方で、大企業・非製造業DIは底堅かった
・大企業・全産業の19年度の設備投資計画は前年度比7.4%増と一見強めだが、18年度の計画が5.9ポイントと大幅に下方修正されたほか、19年度も6月調査では珍しく0.1ポイント下方修正されており、前年度後半にかけて慎重な見方が急激に強まったことがうかがえる
・大企業・非製造業の下方修正幅は18年度が7.1ポイント、19年度が1.7ポイントと大きく、非製造業でも慎重な見方が出てきていることも懸念材料だ
・7月の日銀の金融政策決定会合は基本的に現状維持を予想している。市場動向次第でフォワードガイダンス修正を含め何らかの対応がある可能性もあるが、短観結果では標準シナリオを変える材料はなかった

みずほ総合研究所の門間一夫エグゼクティブエコノミスト:
・6月は不確実性が高まった時期、世界全体のムードに企業の心理も引っ張られた可能性があり、実態より弱い可能性があるという感じはする
・全般的には今回の短観がボトムになる可能性という印象を持っている
・米中の摩擦だけではなく、欧州も含めて世界全体が減速してきている。日本の製造業もIT関連や半導体の影響も多い。調整も長引いている半導体はファーウェイ問題も影響している可能性があり、米国の姿勢を注意深く見ていくしか今の段階ではない

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミスト:
・製造業の下落は予想の範囲内だとみているが、業種で見ると自動車であったりと輸出中心のところが落ちている
・背景には米中貿易摩擦の悪化や米国によるメキシコへの関税の話が出たことで、特に中国経済、ハイテク分野に影響が見られ、それが日本企業にも影響を及ぼした
・20カ国・地域(G20)首脳会議終了後に米中貿易摩擦は落ち着いているので、先行きはこの問題がぶり返さないなら、これ以上のセンチメント悪化はないのではないか
・一方、底堅さが見られたのは非製造業。世界的に製造業分野の懸念が高まる中、非製造業にもある程度影響が見られるのではないかと思っていたが意外にしっかりしていた。もっとも、先行きは下落を示しているので慎重に見ていく必要がある

>>2 に続く

2019年7月1日 9:02 JST
更新日時 2019年7月1日 10:44 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-01/PTFM156S972801