(日経新聞の仕様変更に伴い、画像の引用が出来ません。米政策金利の推移グラフ、パウエル議長の発言骨子に関するJPG画像は元ソースでご覧ください)

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決め、政策金利を据え置いた。ただ、声明文には「先行きの不確実性が増しており、成長持続へ適切な行動をとる」と明記。参加者17人のうち半数近い8人が2019年中の利下げを予測し、景気減速リスクが強まれば年内に金融緩和に転じる可能性を示唆した。

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19日の会合では、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年2.25〜2.50%のまま据え置いた。投票メンバー10人のうち9人が賛成したが、セントルイス連銀のブラード総裁は0.25%の利下げを求めて反対票を投じた。FOMCは15年末に利上げを再開したが、利下げを求める反対票が出たのは初めてだ。

会合後に公表した声明文では、景気動向について「経済活動は拡大が続くとみているが、先行きは不確実性が増大している」と指摘した。金融政策も「不確実性や物価停滞という観点から、今後の経済情報を注視し、経済成長や2%の物価上昇率を持続するため、適切な行動をとるだろう」と明記した。

5月の前回会合時の声明文は「先行きの政策金利の調整は、様子見が適切だろう」としていたが、大幅に修正した。パウエル議長は19日の記者会見で「前回会合以降、逆風が再び強まった」と指摘し、貿易戦争による輸出入の減退や企業心理の悪化を景気の懸念材料として挙げた。

19日のFOMCでは、正副議長、理事、地区連銀総裁による参加メンバー17人が、今後3年間の金融政策シナリオもそれぞれ提示した。7人が19年中に政策金利を0.50%下げると予測し、1人は0.25%の利下げを予測。8人は年内の政策金利の据え置きを主張したが、パウエル議長は記者会見で「据え置きと提示したメンバーの多数が、金融緩和の必然性が増していると同意している」と明らかにした。

政策シナリオを前回公表した3月時点では、年内の利下げを見込んだメンバーはゼロだった。17人の中央値は「19年は利上げも利下げもゼロ」となったが、20年末までの政策シナリオでは利下げを予測するメンバーが9人に増える。中央値は「20年末までに政策金利を0.25%下げる」となり、金融政策は緩和方向へと一気に傾いてきた。

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先物市場はFRBの年内の利下げをほぼ100%の確率で織り込んでおり、投資家が注視するのは金融緩和への転換時期だ。パウエル議長は記者会見で「今後の経済データを注意深く精査する」と述べるにとどめ、具体的な時期を示唆するのは避けた。6月末の米中首脳会談では貿易問題が主題となる見込みで、関税合戦の景気への影響を見極めたい考えがある。

もっとも先物市場では、7月末に開く次回会合で利下げに踏み切るとの予測が8割を超える。20年の再選を目指すトランプ大統領も「1%程度の利下げ」を公然と要求し始めた。市場と政権の利下げ圧力は日に日に強まっており、FRBは利下げ転換の是非を早晩迫られることになる。

2019/6/20 3:02
日本経済新聞
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