【ニューヨーク=宮本岳則】米ライドシェアサービス最大手のウーバーテクノロジーズは9日、新規株式公開(IPO)時の公募・売り出し価格(公開価格)を1株あたり45ドルに設定したと発表した。時価総額に換算すると約820億ドル(約9兆円、完全希薄化ベース)になった。ハイテク企業の上場としては中国・アリババ集団などに次ぐ規模となる。高い成長期待の一方、赤字体質への警戒から、公開価格は想定レンジの下限近くで決まった。

ウーバー株は10日からニューヨーク証券取引所で売買が始まる。調達金額は約81億ドルとなる見通しだ。米調査会社ディールロジックのデータによるとハイテク企業の上場時の時価総額としては2014年のアリババ集団(1693億ドル)に次ぐ規模で、12年のフェイスブック(812億ドル)とほぼ同じ水準となる。同社の筆頭株主は18年1月に出資したソフトバンクグループで、現在は16.3%保有する。

公開価格の45ドルは、ウーバーが4月下旬、上場申請書類で示した仮条件(44〜50ドル)の下限に近い水準だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると当初、ウーバーが転換社債保有者に提示していた予想レンジは48〜55ドルだったとされる。今回の公開価格は当初の会社想定に届かなかったことになる。

控えめな価格設定になった背景には、ライバルの米リフト株の低迷が大きい。先にIPOを果たした同業2位のリフトは、3月の上場初日に株価が急騰したものの、同2日目には公開価格を割り込むなど不安定な値動きが続く。上場後初となる決算で赤字が拡大し、8日の取引で上場来安値水準をつけた。公開価格からの下落率は約2割に達する。「近い将来、黒字化する道筋がまだみえない」(米証券会社ウェドブッシュ)といった声が聞かれる。

ウーバーの開示によると19年1〜3月期の売上高は前年同期比18%増の30億ドル、最終損益は11億ドルの赤字を見込む。積極的な成長投資で赤字体質が続く。「市場拡大が見込まれるほか、世界展開やブランド力で強力な地位を築いている」(米調査会社マンハッタン・ベンチャー・リサーチ)との評価がある一方、リフトと同様、収益性を不安視する声は根強い。公開価格はリフト上場の二の舞いを避けるために、保守的な値付けになったとみられる。
2019/5/10 6:41
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44610770Q9A510C1000000/