JR東日本は9日、次世代新幹線の試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」を報道陣向けに公開した。かねて公開していた先頭車両だけでなく、10両編成の車両全体を初公開した。北海道新幹線が札幌に延伸する2030年度の実用化を目指し、走行実験を始める。最高時速は現在より40キロメートル速い時速360キロメートルと、営業車両として世界最速を目指す。

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先頭車両の長い「鼻」がトンネル進入時に発生する騒音を抑える(9日午前、宮城県利府町)

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窓がないユニークな車両も、車内の静音につながるかなどを検証する(9日午前、宮城県利府町)

JR東日本の新幹線総合車両センター(宮城県利府町)で公開した車両は10両編成で全長250メートル。青みがかったシルバーを基調に緑色のラインが入った車体は、「鼻」と呼ばれる新幹線の先頭車両部分が22メートルと過去最長。車両ごとの窓の大きさはバラバラで、なかには窓がない車両もある。窓をなくすことで車内の静音につながったり、直射日光による熱さを調整したりできるかを確かめるためだ。

車内の様子は公開されなかったものの、通常の新幹線のように座席がびっしり並んでおらず、振動のデータを取るための車載器などを多く積んでいるという。

10日から東北新幹線の仙台―新青森間で夜間に週2回程度走行実験を実施する。実験は22年度までを360キロメートルで安定走行が可能かどうかなどを確かめる「フェーズ1」。22年度以降を車内サービス向上に向けた実験をする「フェーズ2」と考える。2030年度に北海道新幹線が札幌に延伸する際に投入予定の新型の営業車両の開発につなげる。JR東日本研究開発センター所長の小川一路氏は「車両の速さだけでなく、安全性や快適性なども追求した最先端の車両を目指したい」と意気込む。

時速360キロメートルは高速鉄道として世界最速だ。時速360キロメートルで走行できれば、東京―札幌を4時間台で結ぶことも現実味を帯びる。

新幹線の試験車両の投入は現在の東北新幹線「E5系」を製造するために投入した「ファステック360」以来14年ぶり。同車両の実験時には最高で398キロメートルを記録したが、360キロメートルを実現するために騒音などが課題となりE5系は320キロメートルで運行することとなった。

新型は新幹線の「鼻」を長くしたことで騒音の原因となるトンネルに進入時の圧力波を抑えた。パンタグラフも低騒音のものに変えた。加えて地震が起こった際も素早く停止できるように、通常のブレーキに加えて電磁力により減速させる「リニア式減速度増加装置」などを搭載した。横揺れだけでなく上下振動を抑えるための制御装置も新たに設置する。

このほか車両の車載器などで取ったデータをあらゆるモノがネットにつながるIoTで中央に集約することで、車両の不備が起きやすい場所などを予測し、車両メンテナンスの省人化などにもつなげる。

世界で運行している営業車両では現在、東北新幹線のE5系やフランスの高速鉄道のTGVの時速320キロメートルが最速。営業車両で時速360キロメートルが実現されれば、世界に向けても車両性能の高さをアピールできる。

2019/5/9 14:07
日本経済新聞
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