パイオニアとキヤノンは17日、レーザー光で障害物を検知して自動運転に使う「3D-LiDAR(ライダー)」の共同開発契約を結んだと発表した。パイオニアが開発するライダー製品に、キヤノンがカメラ事業で培った光学技術を組み込む。小型・高性能化を進め、2020年秋にも製品投入を目指す。ライダーを含めた自動運転関連事業の拡大を目指す。

両社が開発を目指すライダーは、レーザー光の反射を利用して遠方や車両周囲の状況を、立体的な情報としてリアルタイムにつかむ技術。自動車の運転支援システムとして、自動車メーカーに売り込む。パイオニアは共同開発を通じ、ライダーの光学系部品の設計や開発をより効率化する。

パイオニアは15年からライダーの開発を手がけており、独自技術を生かし開発に取り組んできた。既に試作品を開発し、18年9月から提供を開始している。開発当初からキヤノンのレンズ部品を採用するなど協力関係にあったが、より踏み込んで連携する。

キヤノンはレーザー光を制御するためのレンズ部品や光学系技術に強みを持つ。これまで部品供給にとどまったが、今後は製品改良や小型化の技術を提案していく。量産化の時期は未定。今後は開発にとどまらず、量産・販売での協力も視野に入れる。

ライダーは、高度な自動運転システムに欠かせない。カメラ技術ではとらえられない逆光や霧、暗闇でも障害物を正確に把握できる。自動車部品メーカーに加えて、異業種からも参入が相次いでいる。ただ、高性能なライダーは機構が複雑でコストも高く、量販車への導入には課題がある。

一方、パイオニアが開発を進めるライダーは、低コスト化を期待できる。部品点数を減らしたうえで、レーザーの走査機構にMEMS(微小電子機械システム)ミラーを採用する。高価な発光素子(レーザーダイオード)の数を減らせる。半導体の生産技術を活用することで、MEMSミラーの量産体制をスムーズに構築できる。

光学技術を生かし、自動運転関連事業を拡大する動きが広がっている。ニコンは18年末、ライダーを開発する米ベロダイン・ライダー(カリフォルニア州)に2500万ドル(約28億円)を出資した。シャープはライダーの中核部品になる赤外線レーザーの試作量産に取り組む。部品、電子部品メーカーだけでなく、新規参入組も含めて競争がますます激しくなりそうだ。
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