LINEは16日、今夏から小説やエッセーを投稿し書籍化を目指せるサービス「LINEノベル」を始めると発表した。一般ユーザーがパソコンからスマートフォンアプリで見られるプラットフォームへ投稿すると、人気のある作品は講談社や集英社などから出版オファーを受けられる。合わせてLINEも書籍関連の出版事業に参入し、アニプレックスや日本テレビとともに、優秀作品の書籍化を目指す「令和小説大賞」も開催する。

本日からウェブ上でLINEノベルは小説やエッセー、ブログなど形式を問わず投稿できるようにする。LINEアカウントを持っているユーザーは誰でもパソコン上で横書きの原稿を書き、スマホアプリにアップロードできる。アプリは夏から提供する。投稿内容はマンガのように1話ずつ公開し、読者からの評価やコメントでアプリでの表示順が変わる。人気上位の小説などは有料化も検討する。

16日、東京・目黒で記者会見を開いたLINEの舛田淳取締役は個人がコンテンツを発信、販売できるプラットフォーム「note」や短文投稿サイトのツイッターの成長を例に挙げ「テキストから始まるコンテンツには大きな可能性がある」強調した。LINEではこれまでマンガや音楽など、従来のコンテンツを時代や利用端末に合わせた形に変えたサービスを提供してきた。

LINEノベルには講談社や新潮社など9つの出版社が協力する。出版社側のメリットはウェブ連載者の中から金の卵を見つけられる可能性があることだ。サービス上で魅力的な作品があった場合、編集者が作者に書籍化のオファーなどを出せる。オファーが出ると他の出版社にも通知が行くため、作者にとっても条件交渉がしやすい。

ユーザーの課金方法も工夫した。LINEノベル上での読書時間に応じて無料チケットを配布し、一週間継続して読むと1作品がまるごと読める。LINE側の収益化の仕組みは2つで、1つ目はLINEマンガのように一気読みしたいユーザーからの課金、2つ目は作家デビューの際に出版社から徴収する仲介料だ。

合わせてLINEも出版事業に参入する。出版物やアニメーションの編集や企画を手がけるストレートエッジ(東京・千代田)とともに、小説など「LINE文庫」とライトノベルなど「LINE文庫エッジ」の2レーベルを立ち上げた。自社でも投稿の書籍化を支援し、ヒット作品を探り当てる。

小説など紙の出版物の市場規模は減少傾向だ。出版業界の調査研究機関である出版科学研究所(東京・新宿)によると、2018年の紙の出版物の推定販売金額は17年比5.7%減の1兆2921億円で、14年連続のマイナスとなった。ピークだった1996年(2兆6563億円)の半分を切った。

内訳では、紙の雑誌が9.4%減の5930億円、書籍が2.3%減の6991億円だった。

一方、スマートフォンやタブレット端末などで楽しむ電子の出版物は11.9%増の2479億円と市場拡大が続いている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43785090W9A410C1000000/