米テスラが電気自動車(EV)の本格普及に向け新たな手を繰り出した。2月28日に主力車「モデル3」の廉価版を米国で発売したのに合わせ、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がオンライン販売への全面移行を表明。米国に130ある販売店は一部を除き閉鎖するという。店舗閉鎖でリストラも必要となり課題もありそうだ。

テスラは28日午後2時に米国の自社ウェブサイトを更新し、モデル3に3万5000ドル(約390万円)と3万7000ドルの2つの廉価版を追加した。注文画面に進み車両のグレードやインテリアなどのオプションを選びカード決済で頭金を支払えば、購入手続きがオンライン上で完了する機能も整えた。

最低価格で4万ドルを超え日本円で500万〜700万円とされる従来の中高級グレードの車両と比べて価格が安いのが特徴だ。

テスラは同日の声明の中で「スマートフォンから1分でテスラを買うことができる」と強調した。購入前に販売店で試乗する必要がないように返品のルールも見直し、購入から7日以内、または走行距離が1600キロメートル以下であれば代金の全額払い戻しを受けられるようにした。

米店舗は一部除き閉鎖

テスラのウェブサイトによると同社は米国だけで約130の店舗を原則直営で運営しており、中国や欧州、日本など約30の国と地域にも販売拠点を構えている。テスラはこれらの全ての地域について段階的に店舗でのセールス活動をやめ、オンラインでの販売に切り替える方針だ。人通りの多い場所に立地する一部の店舗を販売機能を持たないギャラリーとして残すほかは、店舗を閉鎖する見込みだという。

狙いはコストの削減にある。高級車ブランドとしてスタートしたテスラは大衆車を含めて品ぞろえする自動車メーカーへの脱皮を目指して16年3月にモデル3の予約を始めた。当初から最安グレードの価格を普及価格帯の3万5000ドルにする計画を示し予約客を集めていたが、これまでは投資回収を優先し中高級グレードの車両しか納車してこなかった。

マスク氏もモデル3の価格が高止まりしている状況に「我々の製品はまだほとんどの人々にとって高価すぎる」と不満を漏らしていた。テスラではオンライン販売への移行と他のコスト削減策を組み合わせることで、テスラ車の平均価格を約6%下げることができると見込んでいる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41949050R00C19A3TJ1000/