都市部を中心に「マンション老朽化」の波が押し寄せている。建て替えに成功した物件がある一方、必要な修繕すら進まないケースも。放置すれば防災面などで地域社会にも影響が出かねないとの危機感から、対策を強めている自治体もある。

 「建て替えられたのは、奇跡のようだ」

 東京都八王子市の住宅街に今年3月に完成した真新しいマンション「レーベン多摩センターBeaut(ビュート)」(12階建て1棟・239戸)は、1976年築の「多摩ニュータウン松が谷団地」(5階建て3棟・80戸)を、住民たちが建て替えた。中心的な役割を果たした小櫃(おびつ)健司さん(77)は、感慨深げに振り返る。

 団地の住戸は3DK・約50平方メートルで、当初の入居者は大半が30〜40代のファミリー層だった。定期的に大規模修繕をしてきたが、築30年を過ぎたころから老朽化が目立ち始めた。外壁のヒビに加え、ベランダのコンクリートの一部が落下したことも。住民が高齢化し、エレベーターがないことも問題になり始めた。

 管理組合は抜本的な修繕も検討したが、外壁修理のほか排水管の交換、エレベーター設置などを含めると修繕積立金では足りず、少なくとも1戸あたり600万円を追加で集める必要があった。団地が建ったのは81年の建築基準法改正の前で、さらに今の耐震基準を満たすための改修を迫られる可能性も高かった。

 そこで建て替えも検討し始めたが、入居者の多くは、すでに70〜80代。「いつまで生きるか分からないから、今のままでいい」という意見も根強かったという。

 だが、2011年の東日本大震…
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