ニッセイ基礎研究所

完全自動運転が普及した社会では、需要に応じて最適な台数のクルマが常に走行している。
利用者を乗せて目的地へ到着し降車したらすぐに次の利用者のもとへと駆けつける。
そのため路上や駐車場に長時間停車するクルマを見かけることはなくなる。ということは、
駐車場がいらなくなることを意味する。

例えば現在では、母へのプレゼントを購入したいと思って自家用車でショッピングセンターに行くと、
まずはショッピングセンターの駐車場に自家用車を止める。プレゼントを購入したら駐車場から自家用車を出して帰宅する。
当たり前だが買い物をしている間、自家用車は駐車場にとどまり続ける。

しかし、誰もが完全自動運転のクルマでショッピングセンターに来るようになれば、
駐車場はいらない。買い物が終われば、別のクルマがショッピングセンターの車寄せまで来て自宅まで乗せていってくれる。
したがって、ショッピングセンター側で駐車場を用意する必要がない。

ショッピングセンターは、駐車場が必要なくなった分のコストを削減できるばかりか、
売り場面積を広げることも可能になる。

集客施設に限らないが、全国の法人が所有する駐車場の敷地面積は約196km2 1あり、これは東京ドーム約4,180個分である。
もちろん移送サービスを提供するためのクルマの待機場所やメンテナンスするドックのような場所は別に必要であろうから、
全てが売り場などに取って代わることはないと思う。ただ、
少なくとも個々の集客施設がそれぞれにドックを用意する必要はないと思われる。

現在大型の集客施設には、床面積に応じた台数の駐車施設の附置が義務付けられているが、
こうした制度も必要なくなる。