10月26日、安倍首相の北京訪問により7年ぶりとなる日中首脳会談が実現し、日中関係は「競争から協調」へと流れが変わった。2012年の尖閣諸島国有化をきっかけに悪化した日中関係だったが、ここで日中は互いに急接近するという大きな転換点を迎えた。

 その理由は、中国が対米貿易戦争で窮地に陥っているからだといわれているが、「日中関係の改善に向け、日本の経団連が積極的に動いていた」(日中関係に詳しい某私立大学教授)とのコメントのように、中国に商機を見出す日本の経済界が先を急いでいたことは確かだ。

 中国では電気自動車(EV)市場が広がるが、日本の関連業界はこれに傾斜を深めている。日本の自動車産業が「世界標準」に食い込むには、中国との共同開発は避けて通れない。次世代EVの急速充電器プラグの規格統一をめぐっては「技術では先行していた日本が中国スタンダードを選んだ」(某私大名誉教授)ことは大きな象徴となった。

 同教授は「問題は“技術”でなく“多数決”。今後はすべてにおいて『14億人対1億人』の原理で動くことになる」と言う。

 日本の大手自動車メーカーが中国重視の姿勢を打ち出す中、中小企業も影響を受ける。自動車部品の金型加工を手掛ける工場経営者は、「国内では自動車メーカーが(ガソリン車の)車種を減らしたため、仕事が半分になった」と明かす。「売れるところでものをつくる」という原理原則に照らせば、「EVの主戦場である中国から仕事を取ってくる時代になるだろう」(同)。

中国では「一帯一路」構想も進む。「日本は『一帯一路』構想に乗り遅れまいと、プロジェクトベースでの協力をやりたがっている」(メガバンクOB)と語るように、第三国でのインフラ建設の受注でコスト競争力が出せない日本は、“中国との連携”に大きく舵を切った。

日中の立ち位置はすでに逆転
 この40年の節目で取り戻した「友好ムード」に、安倍首相は「日中関係は新たなステージに入った」と前向きだが、従来と根本的に異なるのは、日中の立ち位置はすでに逆転しているという点だ。

 2017年時点で、中国の名目GDPは約12.0兆米ドル。アメリカの約19.5兆米ドルに次ぐ第2位の経済大国だ。第3位の日本は約4.8兆米ドルであり、2010年に中国に第2位の座を奪われて以来わずか7年で約2.5倍もの差をつけられた。

 その中国は数々のイノベーションを生み出し、2025年には世界の製造強国となり、半導体や航空機のみならず、ロボットやEVなどの新興産業で「中国が主導権を握る」という方向性を明確に打ち出している。

 2017年11月、中国・北京で開催された日中の経済協力をめぐる会合も、そんな空気に包まれた。「中国側の発言には、(進んでいる)中国が(遅れている)日本にノウハウを教えてあげましょう、というニュアンスさえありました」と、参加者のひとりは日中の立場の変化を振り返る。

 日中の激動の時代をくぐり抜けてきた商社OBは「日本は中国の大きな傘の下で商売をする時代になった」と語る。「日中の新たなステージ」は、こうした転換点をも迎えたことを意味している。
https://diamond.jp/articles/-/183631