2018年10月26日 6:48 (2018年10月26日 12:40 更新) 日本経済新聞
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【北京=重田俊介】中国訪問中の安倍晋三首相は26日、北京の人民大会堂で李克強(リー・クォーチャン)首相と会談した。経済と安全保障で日中協力を新たな段階に進める考えで一致。先端技術をめぐる新対話の設置やガス田開発協議の早期再開、海難救助協定などで合意した。

安倍首相は「競争から協調へ、日中関係を新たな時代に押し上げていきたい」と述べた。「日中は隣国同士であり、パートナーであり、お互いに脅威とならない。自由で公正な貿易関係を発展、進化させていきたい」と語った。安倍首相は会談後の共同記者発表で「この原則を李首相と確認した」と強調した。

会談では「ハイレベルの往来を間断なく続けていくことによってさらに日中関係を発展させていきたい」と、習近平(シー・ジンピン)国家主席の来日も招請した。午後には習主席との会談が予定されている。

李首相は「中日関係は新たな発展の勢いをみせている」との認識を示した。「持続的に前進し、安定的に長期的に発展する互恵関係を実現したい」と呼びかけた。「特に経済貿易協力に関してぜひ、新たな段階に押し上げていきたい」と応じた。

安倍首相は共同記者発表で、東シナ海を平和、協力、友好の海にしていくために前進していくことで一致したと話した。東シナ海のガス田開発に関しては2008年に両国の中間線をまたぐ海域に「共同開発区域」を設けることなどで合意したが、沖縄県の尖閣諸島問題などを受け協議が中断している。

「日中両国共通の目標である朝鮮半島の非核化に向け、引き続き責任を果たすことで一致した」とも説明した。東京電力福島第1原子力発電所事故以来続く日本産食品の輸入規制については、中国側が「科学的価値に基づいて緩和を積極的に考える」と伝えたという。


日中首相は協力案件に関する覚書への署名式に立ち会った。経済分野の協力として、先端技術や知的財産保護を協議する枠組み新設で合意した。

第三国のインフラ投資推進でも合意し、安倍首相は約40年続いた対中政府開発援助(ODA)は今年度で終了を伝達。両首相は企業関係者のフォーラムに参加し、タイで環境に配慮した都市(スマートシティー)を共同開発することなど約50の協力案件を決めた。

通貨を融通しあう通貨交換(スワップ)協定の再開も改めて確認。通貨交換の上限を3兆円規模とし、13年に失効する前の約10倍に拡大する。

安全保障では、自衛隊と中国軍の偶発的衝突を避けるための「海空連絡メカニズム」に関し、防衛当局同士の会合を年内に開くことで一致した。海上捜索・救助協定に署名し、海難事故の捜索や救助活動で両国が緊急対応できるようにする。

中国は中国のパンダの貸与に向け交渉を進めることも確認する。