2018年9月13日 19:11 (2018年9月13日 22:00 更新) 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35333460T10C18A9FF1000

【北京=高橋哲史】中国商務省の高峰報道官は13日の記者会見で、米国から貿易問題をめぐる閣僚級協議を再開する提案があったことを明らかにし「中国はこれを歓迎する」と表明した。米中は互いに制裁関税をかけ合う新たな報復合戦の回避に向け、6月を最後に中断している閣僚級の協議を早期に再開する可能性が出てきた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)などは12日、ムニューシン米財務長官が中国に貿易問題をめぐる閣僚級協議の再開を打診したと報じていた。

高報道官はこうした報道を認めたうえで「貿易摩擦がさらに激しくなることはどちらの利益にもならない」と訴えた。中国として米側の提案をすぐに受け入れることで、トランプ米政権に話し合いによる事態打開への意欲を伝えるねらいがあるとみられる。

具体的な日程などに関しては「双方で話し合いを進めているところだ」と述べるにとどめた。米メディアは、ムニューシン長官と中国の劉鶴副首相がワシントンか北京で数週間のうちに会談する可能性があるとの見通しを伝えている。

米中両国の閣僚級の貿易協議は6月を最後に途絶えていた。その後、トランプ政権は7月に340億ドル分の中国製品に25%の追加関税をかける第1弾の制裁措置を発動。8月には160億ドル分を対象とする第2弾にも踏み込んだ。中国もただちに対抗措置を打ち出し、双方は報復の応酬から抜け出せなくなっている。

米中間選挙を11月に控えるトランプ米大統領は、2千億ドル分の中国製品を対象とする第3弾の制裁措置も近く実施すると繰り返し表明してきた。

実際に発動すれば米国の制裁対象は第1〜3弾の合計で2500億ドルに達し、中国からの年間輸入総額(約5千億ドル)の半分に及ぶ。中国を頂点とするサプライチェーン(供給網)に深刻な影響を与えるのは避けられず、世界経済に大きな打撃となりかねない。

一方、中国は米国が第3弾の追加関税に踏み込んだ場合、600億ドル分の米国製品を対象に報復関税を発動すると表明している。これまでの制裁対象は合計で1100億ドルと米国からの輸入総額(約1300億ドル)の8割を超え、中国が新たな対抗策を打ち出す余力は乏しくなっている。中国国内の景気が減速傾向を強めていることもあり、習近平(シー・ジンピン)指導部はトランプ政権との貿易戦争で防戦に回っているとの見方が大勢だ。

米国が閣僚級協議の再開を提案したのは、こうした中国の弱みにつけ込んだともいえる。いま閣僚級の協議に引き込めば、中国に米国製品の輸入拡大などで大幅な譲歩を迫れると踏んでいる可能性がある。

ムニューシン氏は5月半ばの閣僚級協議のあと、貿易摩擦の「一時休戦」を宣言したにもかかわらず、トランプ政権は一方的に制裁関税の発動に突き進んだ。中国側には、ムニューシン氏が貿易問題でどこまで主導権を握っているのかという不信感が根強い。閣僚級協議が再開しても、事態の打開につながるかはなお見通せない。