2018年9月12日 2:00 日本経済新聞(The Economist)
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35214850R10C18A9TCR000?s=0

ここ数十年、米ロ関係が変動し続ける中、ロシアのプーチン大統領が常に助言を求め、やり取りをし、敬意を表してきた米国の政治家、思想家がいる。それは、冷戦外交の大御所であり、米中の和解、そして米ソの緊張緩和の筋書きを描いたヘンリー・キッシンジャー氏だ。

同氏の現実主義的な世界観は、プーチン氏の共感を呼ぶらしい。プーチン氏は、ソ連の崩壊を地政学的に見て20世紀最大の惨事とみている。冷戦後の世界秩序を書き換えたいと思っているプーチン氏にとって、キッシンジャー氏が少なからず関与して築いてきた米ソ中の三角関係は、示唆に富んだ枠組みのようだ。

ニクソン元大統領が米国と中国との関係改善に動いてから、50年近くたつ。中ロが現在、かつてないほど緊密な関係を誇示していることに、キッシンジャー氏は自分のかつての政策を鏡で見ているような気分になるのではないだろうか。ただ現在、蜜月ぶりを見せつけられているのは米国だ。

ロシアは11日から、中国と合同軍事演習「ボストーク(東方)2018」を東シベリアで実施する(編集注、している)。過去数十年で最大規模の軍事演習になるという触れ込みだ。ロシアからは連邦軍の3分の1に相当する兵士30万人、航空機1000機、戦車および装甲車3万6000台が投入される。中国は兵士3200人、戦車や装甲車900台を送り込み、モンゴルの兵士も参加するという。ロシアが同時に地中海で現在実施している海軍の軍事演習など、西部の国境沿いの演習が欧米との衝突を想定しているのに対し、ボストーク2018はロ中関係の強さを誇示することを狙いとしている。ロシアはほんの数年前まで、中国を直接の軍事的脅威と見なしていた。その点を考えると、大転換だと言える。


※続きます。