2018年8月3日 22:53 日本経済新聞
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【北京=高橋哲史、シンガポール=永井央紀】中国政府は3日夜、米国から輸入する約600億ドル(約6兆7千億円)分の製品に最大で25%の追加関税をかける報復措置を発表した。トランプ米政権が2千億ドル(約22兆円)分の中国製品を対象とする第3弾の対中制裁を実施した場合に発動する。米中の貿易戦争は報復が報復を呼び、泥沼の様相を呈している。

トランプ米大統領は1日、第3弾の対中制裁で追加する関税率を当初の10%から25%に引き上げるよう米通商代表部(USTR)に指示したばかりだ。中国商務省は3日「米側は企業や消費者の利益を顧みずに事態をエスカレートさせており、中国は必要な反撃措置を取らざるを得ない」との談話を発表した。

中国国務院(政府)によると、今回の報復措置は約600億ドルに相当する5207品目の米国製品が対象となる。上乗せする関税率は品目によって25%、20%、10%、5%の4段階。最大の25%を適用する品目には液化天然ガス(LNG)や砂糖、電動カミソリ、電子レンジなどが含まれる。

トランプ政権は7月6日に340億ドル分の中国製品に25%の関税を上乗せする対中制裁を発動し、中国側もただちに同じ規模の報復措置を実施した。米側は近く、第2弾として160億ドル分の中国製品にも制裁関税をかける方針だ。

トランプ政権が2千億ドル分を対象とする第3弾の対中制裁を表明したのは7月10日。中国の米国からの輸入総額は約1300億ドルで、すべてに追加関税をかけても米側と同じ規模には届かない。今回、報復対象が600億ドル分にとどまったのは、トランプ政権に反撃する手立てを失いつつある中国側の苦しい事情を表している。

この発表前、ポンペオ米国務長官と中国の王毅国務委員兼外相は3日、ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議出席のため訪問中のシンガポールで会談した。王毅氏は激しさを増す貿易戦争について「対話を維持すべきだ」と記者団に述べたが、直後に報復関税を発表したことになる。貿易問題を巡る米中高官の公式協議は6月初旬を最後に開かれていない。

王毅氏によると、北朝鮮の非核化問題で両外相は双方の意向を伝えた。ポンペオ氏は国連安全保障理事会をはじめとする対北朝鮮制裁の履行を続けるよう働きかけたとみられる。最大の貿易相手国である中国には、北朝鮮から禁輸品の流入が続いている。中国は米国による体制保証を含めた北朝鮮への見返り措置の必要性を主張しており、王毅氏は半島問題に積極的に関与する姿勢を改めて示したもようだ。