東京電力は、廃炉作業が進む福島第一原子力発電所の写真などを載せたクリアファイルの販売を原発構内のコンビニエンスストアで始めました。ツイッターなどでは「地域から追い出された人が見たらなんて思うのか」「原発に来たことを忘れない意味でいいのでは」などさまざまな声が寄せられています。

東京電力が販売を始めたのは、廃炉作業が進む福島第一原発1号機から4号機の現在の様子や、従業員らが汚染水を処理した水が保管されたタンクのそばを歩いている様子などの写真を載せたクリアファイルです。

原価相当の額だという3枚セット300円で構内のコンビニエンスストアで販売しています。

販売を始めた理由として東京電力は、廃炉作業の視察に訪れた人や作業員などから、記念となるグッズがほしいといった声が多数寄せられていたことをあげ、グッズを通して家族や友人に廃炉の進捗状況を伝えてほしいと説明しています。

これについてツイッターなどでは「地域から追い出された人が見たらなんて思うのか」「廃炉も汚染水処理も見通しが立たないのにお土産」と、批判の声があがる一方で「ここに来たこと、働いたことを忘れない意味でいいんじゃないの」といった意見も投稿されていました。

記念品の販売が議論を呼んでいることについて東京電力は「視察に来た方や作業員らが、家族や友人に福島第一原発の廃炉が進んでいることを話題にしてほしいとの思いがあり、ご理解頂きたい」と話しています。
“ダークツーリズム”の現場では
戦争や公害、災害など、悲しみの記憶をたどる旅は“ダークツーリズム”と言われています。

こうした場所では被害の悲惨さを伝えるための物品を販売しているところも少なくありません。

広島市の原爆ドームのそばにある「原爆資料館」には、年間170万人が訪れます。

この記念館では、折り鶴をあしらったはがきや原爆ドームが描かれたTシャツなど、およそ220点が販売されています。

年間4万人余りが訪れる熊本県水俣市の「水俣病資料館」では、水俣病の患者などが作った絵はがきや木工品、書籍など50ほどの商品が販売されていて、収益の一部は患者らで作る団体の活動費に使われています。

水俣病資料館の草野徹也副館長は物品の販売について「訪れた証しとして、家に帰ってから思い出してもらえるよう物の形で残すことは風化を防ぐには重要だ」と話しています。

その一方で、東京電力が福島第一原発の写真を載せたクリアファイルの販売を始めたことについては「事故を起こした当事者が、みずから商品をつくって販売することには違和感を感じる」と話していました。
2018年8月3日 15時08分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180803/k10011562161000.html