[フランクフルト=深尾幸生]独ダイムラーが米中の貿易摩擦に翻弄されている。26日に発表した2018年4〜6月期の純利益は17億2600万ユーロ(約2240億円)と前年同期比29%減。6月には12月通期の業績予想を下方修正している。決算会見でディーター・ツェッチェ社長は、中国の状況について「めちゃくちゃだ。普通にビジネスをする環境ではない」と嘆いた。

4〜6月期の売上高は407億5600万ユーロと1%減にとどまったが営業利益が30%減った。背景には7月に入って中国が実施した2つの関税の見直しがある。

中国はまず、米国との摩擦を軽減するため7月1日から自動車の輸入関税を25%から15%に下げた。輸入車の価格が下がると見込んだ消費者は4〜6月期に買い控え、ダイムラーは値下げを強いられた。

さらに米国が対中追加関税を発動したため、中国は報復。7月6日に米国産の自動車への関税は15%から40%に引き上げられた。売れ筋の多目的スポーツ車(SUV)を米国の工場で生産し、中国に輸出しているダイムラーは影響を免れない。

ダイムラーは今後、現地で値上げする見通しで販売減を見込む。関税によるコスト上昇分のすべては価格に転嫁できないため、利益も圧縮されることになりそうだ。

1〜6月の商用車を含めたグループ全体の世界販売台数は163万9910台と過去最高を更新した。18年通年ではメルセデス・ベンツにより、高級車販売の3年連続の世界一を狙う。ただ、中国の関税だけでなく欧州の認証試験の制度変更に伴う出荷の遅れも不安材料となっている。

一方、欧州連合(EU)と米国が25日に貿易交渉で合意し、当面は自動車への追加関税を棚上げしたことについてツェッチェ社長は「とても良いニュースだ」と期待感を示した。

ダイムラーは26日、乗用車とトラックなどをそれぞれが独立した法人に分割することを正式に決めた。経営を監督する監査役会が承認した。19年5月の株主総会での承認後、20年1月から新体制に移行する。

ダイムラーは同じ名称のまま持ち株会社になる。乗用車とバンを担当する新会社は「メルセデス・ベンツ」、トラックとバスは「ダイムラー・トラック」、カーシェアリングなどのサービスと金融は「ダイムラー・モビリティ」の名称のもとで再編され、持ち株会社の傘下に入る。

60カ国の700以上の子会社も再編する。従業員数はベンツが約17万5千人、トラックが約10万人、モビリティが約1万3千人になる。再編のための費用は5億〜10億ユーロを見込む。

組織変更は、市場特性に合わせた戦略を描きやすくするほか、機動的に他社と提携できるようにする狙いがある。ツェッチェ社長は「個別の新会社を売却する考えはない」と述べた。

2018年7月27日 0:57 日本経済新聞
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