日本銀行の政井貴子審議委員は5日、松本市で講演し、緩和が長期化する中、経済・物価・金融情勢について従来以上に注視しながら「持続可能な形で強力な金融緩和を息長く続けることが適当」との見方を示した。

  政井委員はデフレマインドが根強い状況が続いているため、2%の物価安定目標の実現には「相応の時間がかかる」と分析。「確実なデフレからの脱却は日本経済にとって積年の課題であり、極めて重要」と指摘した。

   日銀が4月末時点で示した消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の見通し(政策委員の中央値)は今年度が1.3%上昇、来年度が消費増税の影響を除いて1.8%上昇だった。5月のコアCPIは前年比0.7%上昇にとどまり、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIが0.3%上昇と2カ月連続で鈍化した。

  政井委員は足元の物価動向について、想定と比較して「若干弱めの動きとなっている」としつつ、「物価上昇に向けたモメンタムは引き続き維持されている」と分析。リスク要因として米国の経済政策運営や2019年10月に予定される消費税率引き上げの影響を挙げた。

  2%目標が必要な理由については「必要性が広く人々に受け入れられているとは言い難い」とした上で、海外と同程度の物価上昇率を実現することで、長期的な為替や金融市場の安定につながると説明した。家計にとってもデフレ脱却が望ましいとし、「世界が日本の長きにわたるデフレから教訓を得ようと必死になっている中、わが国自身もその経験をより直視すべきだ」と話した。

2018年7月5日 11:57 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-05/PBDEGA6TTDSB01