介護の業界で働くおよそ7万2000人でつくる労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」は21日、利用者やその家族からセクハラ・パワハラを受けたことがある介護職員が74.2%にのぼる、という調査の結果を発表した。

対策の強化に乗り出すよう国に要請していく方針だ。

調査は今年の4月から5月にかけて行われたもの。NCCUの組合員が対象で、訪問介護や通所介護、特別養護老人ホームなどで働く2411人の答えを集計した。

それによると、セクハラを受けた経験があったのは29.8%。「不必要な接触」や「性的冗談を繰り返す、しつこく言う」などが多かった。パワハラを受けたのは70.0%。「攻撃的な態度で大声を出す」や「他者を引き合いにサービスを強要する」、「契約上受けていないサービスを要求する」などが目立っていた。

セクハラもパワハラも、被害を受けた介護職員の7割強が上司や同僚に相談していた。ただし、そのうち約半数が「状況は変わらなかった」と回答。被害者のおよそ9割がストレスを感じていた。セクハラ・パワハラが起きる原因を聞くと、「その人の生活歴や性格に伴うもの(セクハラ:63.9%、パワハラ:55.7%)」が最多。「介護従事者の尊厳が低く見られている(セクハラ:61.3%、パワハラ:54.4%)」が2番目だった。

自由記述の欄ではセクハラの例として、「キスを迫られた」「アダルト画像を見せられた」「金をやるから愛人にならんか、と言われた」といったケースが報告されている。一方のパワハラの例では、「介護保険ではできないことを要求され、断ると激怒された」「我々を見下している」「オムツ交換中に顔を蹴られた。こんな汚い仕事をよくするなと言われた」「時間が過ぎているのに繰り返し仕事を指示される」といった声が寄せられていた。


「社会全体で問題提起を」


NCCUの村上久美子政策部門長はこの日の会見で、「利用者の尊厳だけでなく介護職員の尊厳も守られるべき」と主張。「労働環境を改善しなければ人材が定着せず、結果的に介護離職へつながってしまう」と警鐘を鳴らした。加えて、「業界内だけではなく社会全体で問題提起を」と呼びかけた。

このほか調査結果から、「事業者は職員の安全を考えて欲しい。利用者にペコペコ頭を下げるだけでなく毅然とした態度もとるべき」「利用料金が安いために介護職員が地位の低い者のように扱われるのではないか」「制度に関する啓発が重要」「国がマニュアルを作ったり、自治体でルールを作ったりすべき」といった声を紹介した。
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