小売り最大手のイオンは18日、資源の枯渇が懸念されるニホンウナギの販売を段階的に減らしていくと発表した。東南アジアが原産の別種のウナギ「ビカーラ種」に順次切り替えていき、ニホンウナギは生産履歴の管理ができるものに限って販売する。ウナギの持続可能な調達へと一歩を踏み出す。

 日本人が長年食べ続けてきたニホンウナギは、養殖に使われる稚魚のシラスウナギが乱獲などの影響で激減しており、国際自然保護連合(IUCN)が2014年に絶滅危惧種に指定した。かば焼きの値上がりも続く。

 イオンはこのまま大量消費を続ければ、資源の枯渇を招きかねないとみて、大手商社と組んでインドネシアの河川でニホンウナギに代替できるビカーラ種の養殖に乗り出した。ビカーラ種はニホンウナギと同じウナギ科ウナギ属に分類され、「かばやきにすると、国産のウナギに比べ、肉厚で食べ応えがある」という。

 ただ、ビカーラ種もIUCNから準絶滅危惧種に指定されており、資源保護に配慮しながら安定的に調達する体制づくりが課題だった。イオンによると、ビカーラ種のシラスウナギについて、持続可能な漁ができる仕組み作りにめどがついたという。

 イオンはこの養殖法について、資源や環境に配慮した持続可能な漁業であることを認証する国際機関、海洋管理協議会(MSC)に申請し、23年までに認証取得を目指す。認証されれば、エコラベルを付けて販売できるようになる。第三者のお墨付きを得たうえで、店頭で販売するウナギを順次、ビカーラ種に置き換えていく考えだ。

 イオンの三宅香執行役は「ウナギの食文化を継承するため、持続可能な調達の一助になれば」と話した。

ファミリー層に代替ニーズ
 「ビカーラ種」のかば焼きを食べてみた。見た目はニホンウナギのかば焼きとほとんど変わらないが、若干厚みがあるだろうか。

 一口食べると、ウナギ特有の良い香りがする。おいしい。皮の部分はかみ応えがあるが、身は想像以上に柔らかい。ニホンウナギより小骨が多い気もするが、4割ほど安く食べられるなら十分な味わいだ。

 「ファミリー層は、家族全員分のウナギを買うのが大変なので、足りない分を代替品で補いたいというニーズがあります」とイオンリテールの広報担当者。2017年の総務省の家計調査によると、世帯主が40歳未満の家庭がウナギのかば焼きを1年間に購入する平均額は、世帯主が60歳以上の家庭の5分の1にとどまるという。

 イオンリテールは、2年前の「土用の丑」に合わせて代替品の発売を開始。近畿大学が手がけた「ウナギ風味のナマズ」に始まり、昨年はナマズの一種「パンガシウス」のかば焼きを用意した。パンガシウスの売り上げは、土用の丑の関連商品の1割にのぼったという。

 今年の土用の丑は、品ぞろえをさらに強化する。かば焼きのたれをかけて直火で香ばしく焼き上げた豚バラ肉を、全国のイオンなど約1千店で販売。数年前から取り扱っている商品で、年々1割以上売り上げが伸びているという。かば焼きのたれを染み込ませて焼いたサバも初めて売り出す。(長野剛、牛尾梓)
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