>>1 から続く 

――今年の利上げは当初予想の3回から4回になったが、FRBは引き締め政策にシフトしているのか。

 「2012年に私がFRBで働き初めて以来、景気は大きく拡大した。現在の経済状況は当時とは非常に異なる。金融危機のピーク時には失業率は10%に達したが、今では3.8%まで下がり、さらに下がり続けている。きょう、FOMCで決定したことはこうした経済の強さを反映したものだ。経済成長と雇用は強く、インフレは目標水準に近づいている。長期にわたって我々は低金利政策で景気を支えてきた。設定した目標に近づいた現在、金融政策を平常時のものに戻すべきであり、それを現在やっているところだ」

 ――賃金についての見方は。物価上昇に伴い、賃金も上昇を始めたのか。

 「賃金は少しずつ上昇してきている。景気拡大局面では賃金は2%程度の上昇となったが、労働市場が強くなるのに伴い、賃金は2〜3%程度のペースで上昇してきている。失業率が10%から3.8%に低下する過程では、賃金はもっと速いペースで上昇するかと思った。それがなかったのは生産性の低さによるものとみている。しかし、人手不足の現在、賃金がそれほど上昇しないのには少々当惑している」

 ――失業率は当初予想よりも低く、インフレ予想は高くなった。FRBが政策を変更する前にどの程度までこうした数値を容認できるのか。

 「失業率もインフレ率も予想は3月からほんの少ししか変わっていない。失業率がどの水準なら自然な失業率で長期間維持できる水準なのかは確かではない。しかも米国民の教育水準が上がり、年齢も上がるにつれて失業率も下がっている。しかし、それを正確に把握することはできない。今後の指標を見ながら学ぶ必要がある。そのため、金融政策を変更するための失業率やインフレ率を正確に述べることはできない。我々がゆっくりと利上げをしているのはそうした不透明要因があるからだ」

 「我々はインフレが顕在化するまで待つわけではない。利上げを速くやりすぎてインフレが目標水準まで達しないリスクと、利上げのペースが遅すぎてインフレ率が上昇しすぎになるリスクという2つのリスクに対処している」

 ――民間金融機関がFRBに置いている超過準備預金の付利(IOER)を0.2%引き上げにとどめたのはなぜか。

 「フェデラルファンド(FF)金利を誘導水準内に維持するための技術的な措置にすぎない。IOERの付利の修正はそのツールの一つで、適宜活用していくが、頻繁に利用することはないと思う。正確にその効果が把握できないからだ。米財務省証券(TB)の供給は、レポ金利やマネーマーケット金利の上昇につながるとか、その裁定取引はFF金利をIOERの金利まで引き上げるなどの可能性はある。しかし、それだけの効果とは限らないので、我々も学習する必要がある段階だ。今日のFOMCでのIOER金利を0.2%引き上げにとどめたのは、マイナーな技術的修正だ」

 ――より低い自然失業率と低インフレの経済へのシフトが見られるか。

 「自然失業率は長期間にわたって大幅に低下したと言える。自然失業率は教育水準や人口構成、労働市場などゆっくり動く変数に影響を受ける傾向がある。経済が過熱するなかで循環的に自然失業率が低下した可能性もある。しかし自然失業率に関する研究をみれば自然失業率推定値の幅は大きく、今後の経済データを見て判断していくことになる」

 「インフレ率に関しては、2%の目標はFRBがコントロールするもので、目標達成に取り組まなければならない。インフレ率が2%以下に低下するのを防ぎ、期待インフレが2%に固定されている状況を維持することが重要だ。0%に近くなればFRBによる利下げの余地が低下し、低水準に長くとどまることになる」

 ――20年の失業率見通しの中間値を3.5%に下げたが、長期見通しは4.5%を維持した。どうしたら失業率が4.5%になるのか。

 「我々は自然失業率の水準について学びながら進んでいる状態だ。20年のインフレ率の見通しは目標に近い数値となっていることからわかるように、失業率が低い水準が続いたとしても我々の見通しにおいてインフレ率が予想より速く上昇することは想定していない」

 ――ではなぜ長期的な失業率が20年の予測に近い水準となっていないのか。

 「低くなる可能性もある。しかし、予測には幅があり、観測できない変数に固執すべきではない。データや実体経済で起きていることに基づいて考えるべきだ」

>>3 へ続く(その他金融緩和など政策)