反則行為の指示の有無を巡り、反則をした選手と前監督、元コーチの主張が食い違う日本大学。大塚吉兵衛学長は25日の記者会見で「失墜した信頼を回復すべく真摯に取り組みたい」と厳しい表情を見せた。日大卒業生や他大学の部員の保護者は一連の問題をどうみているのか。

日大芸術学部出身でマーケティングライターの牛窪恵さん(50)は「アメフト部は学生時代から憧れの的。卒業後もずっと応援してきた。日大ブランドの価値が下がり、あまりにも残念」と嘆く。

大学側の一連の対応について「学生を守ろうとする態度が見受けられない」と指摘し、「大学幹部は、学費や卒業生の寄付金で学校経営が成り立っていると分かっているのだろうか。危機管理への意識があまりに低い」と糾弾した。

「日大生であることが恥ずかしいと悩む現役学生も多いはず。卒業生として、学生を守り、励ますためにできることを考えたい」と思いやった。

在学中にシンクロナイズドスイミング・デュエットで五輪銅メダルを獲得したメンタルトレーニング上級指導士、田中ウルヴェ京さん(51)は、競技者は勝利という結果にだけ固執すると、「どう勝つか」というプロセスこそが重要であることを忘れ、ルールを逸脱しても勝てばいいと考える「心の弱さ」と対峙しなければならない、と指摘。「導くべき指導者がプロセスの大切さを見失っていたのではないか」とみる。

日大の運動部の多くは全国優勝の経験を持ち、強豪校としての伝統を受け継いできた。「世界で活躍する多くの先輩や教員が自分に厳しく謙虚な姿勢を背中で見せ、前監督や元コーチもそうした姿を見てきたはずなのに」と残念がる。「試合に立ち会った選手や保護者、観戦したアメフトファンは社会に向けて事実を伝えてほしい」と求めた。

一方、悪質タックルが問題となった関西学院大との定期戦が行われた東京都調布市の競技場では26日、関東学生アメリカンフットボール連盟に所属する他大学の春季オープン戦があった。

大学1年の息子の試合を見に来た千葉県我孫子市のパートの女性(47)は悪質反則問題について「このような形でアメフトが注目されて残念」。息子は大学でアメフトを始め、この日初めて試合に出た。「選手は皆、試合出場を目標に練習している。活動がままならなくなった日大の選手たちは目標を見失ってしまわないか」と気遣った。

大学3年の息子の応援に来た東京都大田区の男性会社員(55)は、反則行為をした日大選手の記者会見を見た後、息子に「おまえも監督に指示されたら、あのプレーをするのか」と思わず尋ねた。「あり得ない」との返答に安堵した一方、「それほど日大選手が異常な状況に置かれていたのだろう」とおもんぱかった。
2018/5/27 1:31
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31017340W8A520C1000000/