インターネットを使って不動産投資のための物件探しをしていると、「えっ?」と驚くほど高い利回りの物件に出くわすことが時々あります。数字を見る限り、とても魅力的です。でも、安易に飛びついても良いものなのでしょうか。なぜそんなに高利回りなのかを冷静に考えると、実は避けたほうが良い物件であることがわかります。今回は「高利回り」をうたう物件の落とし穴について考えます。

まず、広告に出ている利回りは「表面利回り」です。家賃収入を物件価格で割って100倍にしたものです。特に気をつけたいのは、家賃収入が「満室時」で計算された数字であることです。すべての部屋が一年中埋まっているという、なかなかありえない状況を前提にしています。不動産投資の最大リスクは空室です。入居者がいなければ収入はありません。満室想定の表面利回りは、まさに「取らぬ狸の皮算用」でしかないのです。

そうなると、不動産投資で大事にしたいのは、「実質利回り」です。家賃収入から物件管理費や修繕費、固定資産税などを差し引いたものを、物件価格に仲介手数料や印紙税などの取得時コストを加えたもので割って100倍にした数値です。経費が考慮されていますので、表面利回りよりもポイントは低くなります。

融資期間を20年、金利を2%とした場合、表面利回りで8%前後が採算ラインとされています。利回りがこれより高く、融資期間が長いほど、キャッシュフローがプラスとなり儲けが出ます。物件探しでは、表面利回り「8%前後」がひとつの基準になります。

高利回りの理由
利回りが高くなる理由を考えてみましょう。まず考えられるのは「物件価格が安い」ということです。それでは価格が安い原因はなんでしょうか。

事故物件、墓地やごみ処理施設が近くにある物件、狭小物件、さびれた地方の不便なエリアにある物件などでしょうか。こういう物件は非常にハイリスクです。入居者がつかなかったら、もう永遠につかないパターンです。ひとたび買ってしまったら、売るに売れない代物といえるでしょう。

このほか、築年数があまりに古いものも考えられます。耐用年数から考えて、融資期間が極端に短くなってしまい、月々の返済額が大きくて、実際はキャッシュフローが出ない可能性があります。また、入居者が長年にわたって住み続けているというケースも考えられます。彼らが退去した後、同じ水準で家賃設定ができません。とにかく悪い材料ばかりが容易に想像できます。

不動産投資サイトで紹介されている高利回り物件については、「プロがすでに購入を検討したものの、購入しなかった物件」と考えるぐらい、慎重になったほうが賢明かもしれません。蛇の道は蛇。プロは情報通です。個人投資家に情報が回ってくる前に、業者間で情報がやりとりされている可能性は非常に高いのです。しかし、想定されるリスクが回避できないと判断されたため、いくら利回りが高くても、資金的に余裕のある業者でも、買い手が付かなかったと考えるべきです。

リカバリー可能な物件も
魅力の乏しい物件でも、オーナーの手で改善できるケースがあります。たとえば、古いものならオーナーが「DIY」で費用を抑えてリフォームして貸し出す方法もあります。古い設備は入れ替えも必要ですが、こうした改善でリスクが減らせるなら購入を検討する余地はあるかもしれません。

また、国の住宅セーフティネット制度を利用するのもひとつの考え方です。これまで、家賃の不払いを警戒し、単身高齢者や障害者、被災者世帯など、いわゆる住宅確保要配慮者は、入居審査の時点で落ちることが多くて、なかなか賃貸住宅に入れないという現実がありました。

このため、2017年に、彼らの入居を拒まない賃貸住宅として都道府県に登録すれば、入居者のマッチングだけでなくバリアフリーや耐震改修工事に補助金が出るなど、便宜を図ってくれる制度ができました。こうした物件は、競争の激しくなった賃貸市場のニーズに応えるために、設備を充実させたり、リノベーションしたりしなくても、一定の入居者に恵まれる可能性が高いのです。

このように、なんらかの対策が講じられるのであれば、高利回り物件は「アリ」かもしれません。不動産投資の経験を積めば積むほど「引き出し」は多くなります。知識も経験も豊富で、不動産投資の「酸いも甘いも噛み分けた」方であれば、手を出して良いモノもあるでしょう。ただ、そうではない場合、特に初心者の方々は、手を出さないほうが無難かもしれません。ハイリターンはハイリスク。千里の道も一歩からです。
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