産経ニュース 2018.5.22 08:00
http://www.sankei.com/premium/news/180521/prm1805210001-n1.html

 財務省が発表した平成29年度の国際収支(速報)で、モノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支が
前年度比3.4%増の21兆7362億円の黒字となった。比べられる昭和60年度以降では過去3番目の
高水準で20年のリーマン・ショック以降では最大だ。牽引(けんいん)するのは、海外投資からの
収益を示す第1次所得収支のうち「直接投資収支」で8兆9459億円の黒字だった。黒字額は前年度から
約1割増えた。内閣府の分析によると、国別で最も多いのは中国からの収益。国の「家計簿」にたとえられる
経常収支の改善も“中国頼み”が続いている。

 「首脳同士が直接話し合うことで、具体的な成果を上げることができる」

 5月9日、安倍晋三首相は東京で開かれた日中首脳会談後の記者発表でこう述べ、中国との経済連携を
深めていく考えを示した。

 具体的には、中国が掲げる経済圏構想「一帯一路」推進での協力▽両国が金融危機時に互いの通貨を
融通し合う通貨交換(スワップ)協定の早期締結▽東京電力福島第1原子力発電所事故後、
中国が続けている福島県などからの食品輸入禁止措置の緩和・撤廃に向けた共同専門家グループの設置−
などで合意した。中国側は「人民元適格海外機関投資家(RQFII)」と呼ばれる制度に基づき、
日本の金融機関が中国の株式や債券に人民元建てで投資できる約3兆4000億円規模の投資枠も認めた。
この投資枠設定について、ある経済官庁幹部は「大きな意味がある」と評価する。

 日本経済にとっての中国の重要性は、財務省がまとめる国際収支にもあらわれている。内閣府の分析では
「直接投資収益」が特に大きな意味を持つという。

 直接投資収益とは、日本企業がM&A(企業の合併・買収)で取得したり新設したりした現地法人のうち、
出資比率が10%以上の「海外子会社」から、日本国内の親会社へ渡る配当金などのことだ。内閣府によると、
受け取る収益を地域や国別でみると、アジア、特に中国からの収益が年々拡大しているという。

 内閣府は暦年で集計している。それによると29年のアジアからの直接投資収益は4兆3438億円と
20年の約2.6倍に達した。北米からは2兆6782億円と20年の1.8倍、EUからは1兆9124億円と
20年の2.4倍だった。アジアが3地域中、最も額が多く、20年比の伸び率も最大だった。

 さらに、アジアからの直接投資収益の国・地域別の内訳をみると、最も多かったのが中国の1兆4004億円
(アジア全体の32.2%)で20年比約3.3倍だった。そして、タイの8149億円(18.8%)、
シンガポールの4929億円(11.3%)が続く。

 中国からの投資収益が増えている理由の一つが、中国での工場などの「オートメーション化需要」(内閣府)
とみられる。中国は製造業の高度化に向けた国家戦略「中国製造2025」を掲げ、産業ロボットといった
10分野に重点投資して、工場の自動化や生産性向上の取り組みを進めている。この需要に対応し、
機械類などを販売する日本企業の現地子会社の収益が拡大しているという。


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