日本経済新聞 2018/5/14 9:40
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3044727014052018MM0000/

 【ドバイ=岐部秀光】アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)は13日、
事業の付加価値を高める目的で、主に精製など下流部門を対象にした450億ドル(約5兆円)の
巨額投資計画を発表した。電気自動車(EV)の普及などで世界的な「脱石油」のエネルギー転換が進むなか、
原油の生産という上流部門を軸にしてきた有力産油国の国営石油会社が抜本的な事業改革に動き始めた。

 計画によると、今後5年間で、UAE西部にある石油化学工業地帯ルワイスの施設を大幅に拡張する。
新しく製油所を建設するなど、現在の石油精製能力を65%以上増やし、日量150万バレル以上に引き上げるという。

 ADNOCのジャベル最高経営責任者(CEO)は「既存のパートナーだけでなく新しいパートナーにも呼びかけ、
世界最先端の精製、石油化学施設を築きたい」と表明した。

 ADNOCは高付加価値化の改革を成功させるため、日本の政府や企業にも協力を求める立場にある。
今年、日本の国際石油開発帝石にアブダビ沖の海上油田の権益更新を認めた。

 UAEのほか、サウジアラビア、クウェートといった湾岸アラブの産油国は人口の急増にも直面しており、
将来は原油販売に頼らない国づくりを迫られる。公務員だけを雇用の主要な受け皿とするのは限界で、
競争力のある石油化学部門を発展させることを第1の目標に据える。徐々に製造業を育成し、
経済における政府や石油部門の役割を縮小していくねらいだ。