JR北海道が10日発表した2018年3月期の連結決算によると、北海道新幹線の営業赤字は100億円と前の期(54億円)に比べ2倍近くに増えた。開業効果が一巡し、利用者数が落ち込んだうえ、インフラ修繕費がかさんだ。安全関連投資が217億円に膨らんだため、最終損益は87億円の赤字と2期連続の赤字。依然として厳しい経営状況が続く。

https://www.nikkei.com/content/pic/20180511/96958A9F889DE1E2E1E0E6E3E4E2E3E2E2E7E0E2E3EA9EE6E3E2E2E2-DSXMZO3032414010052018L41001-PB1-1.jpg
記者会見する小山専務(10日、札幌市)

 鉄道運輸収入は前の期比横ばいの728億円。このうち新幹線収入は79億円で23%減った。小山俊幸専務は10日、札幌市内の本社で記者会見し、北海道新幹線の苦戦について「東北新幹線との相互直通運転を行うため、10両編成で運行する必要があり、乗客数が相対的に少ない北海道新幹線区間ではコストがかさむ」と述べた。

 北海道新幹線の線路をJR貨物が共用していることもコスト高の一因になっている。共用区間は貨物列車とすれ違う際、安全確保で新幹線の速度を落とすため、所要時間が増加。貨物列車用の鉄道設備の経費も負担する。JR貨物が17年度、JR北に支払った線路使用料は20億円だったのに対し、貨物列車が走行する線路の修繕費は200億円規模に上った。

 連結営業損益は416億円の赤字(前の期は398億円の赤字)と過去最大の赤字だった。同社発足時の国からの支援金である経営安定基金の運用益は255億円に上ったが、経常損益は黒字転換できなかった。鉄道事業の赤字を基金運用で補う従来の収益モデルが成り立たなくなっている。

 グループの総力を挙げても鉄道事業の赤字を補えない。バスや小売り、不動産、ホテルなど連結子会社22社の総売上高は1%増の1525億円、営業利益は8%増の105億円と伸びている。しかし、22社合計の営業利益は7億円増えたが、JR北単体の営業赤字は27億円増だった。

 ただ、成長株の子会社もある。増加傾向が続く訪日外国人客の宿泊需要を取り込んでいるJR北海道ホテルズは売上高が12%増の78億円、純利益が59%増の6億円に上った。道内個人消費の回復を背景に、駅ナカ商業施設を運営する札幌駅総合開発は売上高が2%増の214億円、純利益が3%増の27億円だった。

2018/5/11 1:00
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30324160Q8A510C1L41000/