三越伊勢丹ホールディングスが9日発表した2018年3月期連結決算は、最終損益が9億円の赤字(前期は149億円の黒字)で、10年3月期以来8年ぶりの赤字に転落した。構造改革に伴い261億円の特別損失を計上したことが響いた。営業利益は前年同期比2%増の244億円。19年3月期は最終損益130億円の黒字転換を見込んだ。

東京都内で同日、記者会見した杉江俊彦社長は「中期経営計画の目標を1年前倒しし、20年3月期に営業利益350億円を達成する」とV字回復を目指す考えを示した。

杉江社長はこのなかで、前期の赤字は想定していたとしたうえで、「構造改革によって膿を出し切った」と強調した。20年度までに800〜1200人の早期希望退職の募集と不採算事業の整理などは引き続き行うが、地方店の店舗閉鎖などは否定。ただ、地方店については「業態転換やテナント増など抜本的な改革を進めていく」とした。

今後は稼ぐ力をつけるためネット通販の台頭を念頭に百貨店の「デジタル化」を進める。スマホアプリの展開やウェブサイトのリニューアルなどに200億円以上を投資する。

伊勢丹新宿店と日本橋三越本店の2旗艦店について品ぞろえの拡充など再活性化のため、計250億円を投資して稼ぐ力の底上げを図る。

ただ、中計で示した不動産事業の今後の具体像は不透明だ。「GINZA SIX(ギンザシックス)」を開業させたJ.フロントリテイリングや高島屋が不動産事業を強化する中で、なおも具体像は示せていない。

一方、コーポレートガバナンス(企業統治)強化のため女性初の社外取締役に、花王生活者研究センターでコミュニケーションフェローを務める久保山路子氏が就く人事も公表した。
2018.5.10 06:04
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180510/bsd1805100500002-n1.htm